2017年11月19日

俺さま幼なじみとの溺愛同居13


 弘幸は眉間のシワを深くして、

「だれかに見せるために着てんのか」

 低い声音で尋ねてくる。未来はぶんぶんと何度も首を横に振った。

「ち、ちがっ……う」
「じゃあなに?」

 クイッ、とブラジャーの肩紐をつまみ上げられる。かぁぁっ、と全身がますます火照る。

「……っ、女子力アップのためだよ!」
「女子力上げるんならまずパジャマからだろ」

 やっとの思いで答えたというのに真顔でツッコミを入れられ、未来はもう黙り込むしかない。

「未来ってほんと面白い」

 彼が眉尻を下げて穏やかに笑う。指でつまみ上げている、未来のブラジャーの肩紐に唇を寄せた。

「……いろいろと、たまらない」

 上見遣いで見つめられる。いったいなにがたまらないというのだろう。しかし問い返す余裕なんてない。いつの間にか背中にまわり込んでいた彼の手がブラジャーのホックをプチンッと静かに弾いた。

「やっ、ぁ」
「なんて声だよ。体を拭くだけだってだって言ってるのに」

 弘幸は未来の肩に口づけながら彼女のパジャマを完全に脱がせた。いま身につけているものはゆるくなったブラジャーと、透け感のある紫色のショーツだけ。

「ぜ、ぜんぶ脱ぐ必要ないでしょっ」

 未来は開き直り、何とかこの状態でとどめておこうとする。弘幸は一瞬だけ不満げに顔を歪めたが、「まあいいか」と言ってホットタオルを手に取った。

「……うしろを向いていてもいい?」

 視線をさまよわせながら未来が言うと、弘幸は小さな声で「うん」と返す。未来はごろんと寝返りを打ってベッドにうつ伏せになった。

「……なんだこれ、尻が丸見え」
「――あっ!!」

 しまった、墓穴を掘ってしまった。未来は慌ててショーツを押さえるものの、いまさらだ。

「なに、これを見せつけたかったわけ?」

 未来はぐりんぐりんと大きく首を横に振った。すると弘幸はにいっと笑って、透けたショーツ越しに未来の尻を撫で上げた。

「ふゎぁっ!」

 奇声と上げると弘幸はますます調子づいて、何度も何度もすりすりと尻を撫でる。割れ目になっているところをツウッと指でたどられると、生地越しの感触とはいえぞくりと全身が震えた。
 弘幸は右手で未来の尻を撫でながら、左手で彼女の背中をそっと拭き上げる。温かく湿ったタオルで背中を拭かれると、何でもないことなのに手足の先がぞくぞくとしびれた。
 きっと弘幸にそうされているせいだ。自分で背中を拭いたのなら、体はこんなふうに官能的な反応を示さない。

「……ん、ん」

 おかしな声が漏れ出てしまうのを抑えられず、そんな自分に戸惑う。

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2017年11月18日

俺さま幼なじみとの溺愛同居12


 弘幸はくすぐったそうにしている未来の顔をまじまじと見つめたあと、

「汗ばんでるな。ちょっと待ってろ」

 そう言って部屋を出て行ってしまった。

(ちょ、ちょっと……!)

 彼に舐められたところだけよけいに熱が上がってしまったのではないかと思う。首すじは焼け焦げたように熱く、甘いしびれを伴っている。

(何だか……ヒロくんには振りまわされてばっかり)

 いや、いろいろと世話にはなっている。しかしいつだって彼のペースだから、こちらとしては少し疲れてしまう。いまだって、突然部屋を出て行ってしまった彼が戻ってくるのを待ち焦がれている自分がいて、戸惑う。
 間もなくして弘幸は真っ白なタオルを片手に戻ってきた。

「体、拭いてやるよ」
「は――えっ!?」
「ハエなんていない」

 クスッと笑ってそう言いながら弘幸は未来の掛け布団を彼女の体から引き剥がす。

「おまえ、昔からクマ柄のパジャマだよな」

 ああ、また子どもっぽいと思われている。

「ほ、ほっといて……!」

 パジャマのことも、汗ばんだ体のことも放っておいて欲しかった。

(だって恥ずかしすぎる……っ)

 布団の中に隠れてしまいたいけれど、きっと弘幸がそうさせてくれないだろう。そもそも掛け布団は彼に剥ぎ取られて、いまや手の届かないベッド端に追いやられている。

「ほら、脱げ」
「ゃっ、やだ……本当にいいってば」
「いいんだな? じゃ遠慮なく」
「なっ、ちがうーっ!」

 バタバタと暴れる未来のパジャマの上着を弘幸がつかむ。

「あんまり暴れてると熱が上がるぞ。大人しくしてろ」
「うっ」

 弘幸に膝の上に馬乗りされ、未来は否が応でも暴れられなくなる。
 プチン、プチン。パジャマのボタンは上から順番に一つずつ外されていく。

「ちょっ、ほんとに、あの……ッ!」

 すぐにはボタンを留めなおすことができないから、せめてもの抵抗として上着の襟を押さえた。しかしそれもむなしく終わる。弘幸はパジャマの襟をひっつかんで無理やり左右に開いた。そうしてあらわになった未来の下着を見て、弘幸はしばし固まった。

「クマ柄パジャマのくせに……なんだ、この下着」
「……っ!!」

 未来が身につけているのは紫色のレースの下着だ。上下そろいのもので、ショーツに至ってはお尻の部分が透けている。そのショーツだけは何としても見られたくなくてズボンの腰もとをつかんでいたが、いぶかしげな顔の弘幸にズボンまでも引き下ろされてしまう。
 弘幸は今度は無言で未来の下着姿をまじまじと見ている。口を開けば憎まれ口ばかりの彼だが、無言だとよけいに恐ろしい。
 未来はあまり意味はないとわかっていても自分自身の体を腕で隠す。

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2017年11月12日

俺さま幼なじみとの溺愛同居11


 未来はたまらず、掛け布団を目の下まで引き上げた。そのようすを弘幸は不思議そうに眺める。

「なんだ、どうしたんだよ」
「べつに……何でもない」
「何でもないってことないだろ」

 いましがた未来が引き上げたばかりの掛け布団を弘幸は無理に下ろして彼女の顔をあらわにする。

「ちょっ、なにするの」
「なにって……おまえが顔を隠すから」
「隠しちゃいけない?」

 依然として赤い未来の顔を弘幸はじいっと見つめる。ギシッ、とベッドがきしむ。弘幸が未来の顔の両側に手をついたからだ。
 彼の顔が近づいてくる。未来はわけがわからず何度もまばたきをした。

「昨夜のこと……はっきり覚えてる」

 思わぬ告白を受け、未来は縮み上がった。

(それって……キスのことよね!?)

 彼は酔っていたし、寝ぼけてもいたようだからキスのことは記憶にないだろうと思っていた。それなのに、はっきり覚えているだなんて。昨夜の彼の唇の感触がありありとよみがえってくる。

「正直に言う。俺の家に来るか、っておまえに訊いたとき……下心があった」

 コツン、と額がぶつかる。弘幸の顔は真剣そのものだ。

「俺はおまえとあんなことやこんなことをしたい」

 真剣な顔つきでそんなことを言われ、未来はツッコミを入れずにはいられない。

「――っ、あんなことやこんなことって、なに!?」
「んー……実践しながら教える」

 すり、と上唇を指でたどられた。それから頬と顎をつかまれる。

「あ……ま、待って……! そんな……したら、風邪がうつっちゃうから……だめ」

 未来はあわてて顔をそむける。

「平気だって。さっきも言ったろ、俺は頑丈だ。……だめな理由って、それだけ?」

 問われ、未来はあいまいに「んん」とうなる。すると弘幸は幾分か上機嫌になったようだった。

「じゃ、口以外ならいいか?」
「えっ!?」

 未来はどう答えればよいものかと悩んでうろたえる。口以外といってもいっぱいある。彼はいったいどこになにをする気なのだろう。

「どうなんだ」

 急かされても、はっきり「いいよ」とは言えない。それを言ってしまったらとんでもないことになるのではないかと、漠然と思った。
 しびれを切らしたのか、弘幸は未来の返事を待つのをやめて顔を動かす。彼女の首すじに唇を寄せて舌を出した。

「……っひゃ!」

 生温かい舌が首すじをれろりと大胆に舐め上げる。

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2017年11月11日

俺さま幼なじみとの溺愛同居10


 弘幸の目は開いているのかそうではないのか、近すぎて焦点が合わないのでよくわからない。もしかしたら彼は寝ぼけているのかもしれない。

(キス、してる――ヒロくんと……!)

 驚きのあとにやってきた感情は喜びと羞恥。否定的な感情はいっさいない。そうして未来は自覚する。自分は彼にずいぶんと好意的なのだと。

(でも、なんでヒロくんは私にこんなこと……っていうか、キスってこんなに長い時間するものなの!?)

 先ほどから彼はいっさい動かない。なにもかも初めての未来は身を硬くしたまま動けずにいた。やがて聞こえてきたのは、規則正しい寝息。

「……ヒロくん?」

 呼びかけても返事はない。あるのは「すう、すう」という穏やかな吐息の音だけ。

(寝てるし!)

 未来はそっと顔を離して弘幸の顔を見る。瞳は固く閉ざされている。どう考えても寝ている。
 はぁぁ、と長いため息をついて未来は起き上がろうとした。しかし、腰もとに巻きついている弘幸の腕がどうしても外れない。

(寝てる……んだよね!?)

 そう疑ってしまうほど彼の腕には力が入っている。

(あんまりもがいてたら、起こしちゃうかな……?)

 せっかく眠っているところを起こしてしまうのは忍びないという気持ちと、いや、無理に起こしてでもベッドへ行ってもらうべきだという気持ちがせめぎ合う。

(……ひとまず、もう少しだけ)

 彼がお酒を飲んでいるせいか、弘幸の腕の中はとても温かく心地がよかった。ほんの少しだけのつもりで目を閉じる。
 ――その『ほんの少し』がいけなかったと、あとから後悔することになる。



「……っ、くしゅん!」

 リビングのソファで眠ってしまった未来は見事に風邪を引き、明くる日、土曜はずっとベッドの上で過ごすことになってしまった。

「ったく、情けないなー」

 赤い顔で布団の中にいる未来を見下ろし、弘幸はわざとらしく大きなため息をつく。

「いったいだれのせいだと!? ……ぅっ、げほっ」

 いきなり大声を出したので咳き込んでしまった。弘幸に「大人しくしておけ」と咎められる。未来は「うぅ」とうめいて恨みがましく幼なじみを見上げた。

「……なんでヒロくんは平気なの?」
「俺はおまえと違って頑丈なんだよ」

 いかにも得意げに弘幸がほほえむ。

(どうして私だけ! ソファで一緒に寝てたのに……)

 そう、一緒に寝ていたのだ、朝まで。
 風邪による熱とは違うなにかがいっきに込み上げてくる。全身の血が沸騰しているんじゃないかと思う。それくらい、とにかく熱い。

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2017年11月05日

俺さま幼なじみとの溺愛同居09


 研修を終えた日――週末の夜。弘幸から「夜ご飯はいらない」と連絡を受けた未来は夕食を簡単に済ませて報告書作りに励んでいた。
 自室にはテーブルがないので、リビングのローテーブルの上にノートパソコンを置いて研修内容をまとめた。

「ふー……」

 報告書の最後に「以上」という文字を打ち込み、ファイルを保存する。ふと時計を見ると、ちょうど夜の12時をまわったところだった。
 ガチャッ、という金属音が何なのか、未来はもう知っている。

(あ、ヒロくんが帰ってきた)

 未来はノートパソコンの電源を切って立ち上がる。リビングのドアが開くなり、

「おかえりなさい」

 と言って弘幸を迎えた。

「……ただいま」

 彼の声が少しかれているのはお酒のせいだろうか。弘幸は飲んできたらしく、彼が近づくと酒の匂いが濃くなった。

「お水かなにか飲――」

 すべて言い終わる前に目の前がぐるりとまわった。

「……っ!? ヒロくん、大丈夫!?」

 ――酒のせいでふらついて、それで私を巻き込んでソファに倒れてしまったのだと思った。
 弘幸は未来に覆いかぶさり、彼女の肩に顔をうずめて動かない。
 ソファに押し倒されてしまった未来は何とか起き上がろうとしたが、彼の体に阻まれて少しも身動きがとれなかった。

「……ヒロくん?」

 眠ってしまったのだろうか。そうだとしたら、なおさらここから抜け出さなくては。そして部屋から毛布を持ってくる。こんなところでスーツのまま寝ていたら風邪をひく。

「ねえ、ヒロくんってば」

 もしくは何とかして起こして自室へ行ってもらおう。やはりベッドで眠るのがいちばんだ。両手で彼の肩をつかみ、揺さぶってみる。

「んん……」
「――っ!」

 耳もとでそんな低い声を出さないで欲しい。くすぐったくてたまらない。脇腹のあたりがむずむずしてくる。
 大きな手のひらがペタッと頬に張り付く。弘幸は未来の顔がどこにあるのか手探りしているようだった。熱い大きな手のひらに、無理やり彼のほうを向かされる。

「……未来」

 視線が合った瞬間、名前を呼ばれた。つやっぽい表情で見つめられ、心臓がドクンと大きく跳ねる。

「あ、あの……ちゃんと部屋で寝ないと、風邪ひいちゃ――」

 またしても最後まで言えなかった。熱のこもった柔らかな唇を押し付けられ、言葉どころか呼吸もままならなくなる。

「ん、う……っ!」

 キスをするのはこれが初めてだった。二十二年間だれとも、こんなふうに唇を合わせたことなんてなかった。

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