2016年02月20日

満員電車のデキゴコロ02


 ガタン、ゴトンという走行音がゆるやかになっていく。もうすぐ駅に到着する。しかしまだ、降車駅ではない。

「んぐっ、ぐ……!」

 降りる人と乗る人が入り乱れて車内がいっそう混雑する。
 美奈と優人のあいだの距離が変わった。
 ふたりのあいだにはもうほとんど隙間がない。美奈は優人に抱きついているような状態だ。
 両腕を彼とのあいだに挟み込んではいるが、体を押し付けてしまっている。

「ごめんね、苦しいよね?」

 謝りながら優人を見上げる。

「……ん。へいき」

 美奈はパチパチと数回まばたきをした。きっと見間違いではない。彼の頬が真っ赤に染まっている。

(もしかして、意識されてる……?)

 ひそかに想いを寄せてきた、となりの家のお兄ちゃん。8つも年が離れているから、妹くらいにしか思われていないのだと、あきらめていたのだが――。

(あ……当たって、る)

 ピタリと密着しているからこそわかる。彼のオスの部分が、大きく硬くふくらんでいる。
 美奈はそのことを確かめるかのように身をよじった。
 決して、刺激しようと思ってしたわけではない。

「……誘ってる?」

 美奈の肩が大きく跳ねる。
 電車の走行音にかき消されそうなほど小さな声で優人はささやいた。けれど、耳のすぐそばだったから聞き漏らしたりはしなかった。

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posted by 熊野まゆ at 06:47| 満員電車のデキゴコロ《完結》


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