2015年06月17日

今宵、お兄ちゃんに夜這いします。01


今宵、お兄ちゃんに夜這いします。

智香(ともか)は先月誕生日をむかえたばかりの23歳。やる気のないOLだ。
なぜやる気がないのかは割愛する。

さあ、今夜は新月。絶好の夜這いびより。

兄の友哉(ゆうや)がひとりで住むマンションに押しかけてシャワーを浴びていた智香は洗面台の前で自分の姿を確認していた。

(うう、恥ずかしい格好……)

乳房があらわになったオープンバストのキャミソールは見ているだけで恥ずかしくなるが、これもすべて兄を落とすため。ショーツの腰ひもをあらためてゆるくリボン結びにした。
両手にこぶしを作って「よしっ」とひとりごとをつむいで気合いを入れる。

それから下着姿のまま、リビングへ向かった。

真夜中の薄暗いリビングを、ぺたぺたと静かな足音を立てながら進む。

つき合っていた彼女にふられてやけ酒をして泥酔中の兄はリビングのソファですうすうと品行方正な寝息を立てて眠っている。
襲うのには絶好の機会だ。これを逃したらきっともうチャンスはおとずれないだろう。

オレンジ色の淡い光に照らされた友哉の顔は麗しい。

この美しさは自分とはまったく別の遺伝子で構成されている。連れ子どうしの再婚だから3歳年上のこの兄とは血がつながっていない。

彼の艶やかな黒髪をそっと撫でる。やわらかく、少しクセがある。

(はあ、やっぱりかっこいい)

友哉と初めて出会ったのは智香が15歳のときだ。


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2015年06月18日

今宵、お兄ちゃんに夜這いします。02


兄になるのだと紹介されたものの、ひとめぼれだった。
おかげで智香の青春は兄への恋慕しかなく、いまだに処女だし男性とつき合ったこともない。

すうすうと静かな寝息の友哉に対して智香の鼻息は荒い。緊張して大仰に呼吸しているせいだ。

(本当、まつ毛が長いな、お兄ちゃんは)

固く閉じられたまぶたを羨望の眼差しで見つめる。

「……ん」

大きくため息をついてしまったからか、友哉の目もとがピクリとわずかに動いた。
智香はあわてて顔を遠ざける。

(ど、どうしよう。やっぱりやめようかな、こんなこと)

友哉には女性として意識されていない。だからこそひとり暮らしの彼の家に泊まるのも許されるのだ。

このまま無難に兄妹関係を続けているほうが、長く一緒にいられるのでは――。

(ううん、でもやっぱりイヤ。お兄ちゃんが誰かのものになっちゃうなんて)

いつかはほかの女性と結婚してしまうだろう。
それよりも先に自分が兄を誘惑して、あわよくばと考えていまこんなことをしている。

(別の女のひとと付き合い始めちゃう前に、モノにしなくちゃ)

智香は口をタコのように尖らせて友哉の唇を目指した。
ソファの端をにぎりしめる両手が震える。

(あと、もう少し……)


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2015年06月19日

今宵、お兄ちゃんに夜這いします。03


どくどくと胸を高鳴らせながら彼に顔を寄せる。

「……コラ、なにやってる」

「ぶっ」

大きな手のひらが智香のあごをつかむ。

「あっ、あの、お兄ちゃん……その」

幸いリビングは小さなオレンジ灯だけだから薄暗い。智香はとっさにソファの下へ身を隠した。

(って、隠れる必要なんかないのよ。このエッチな姿を見せて、お兄ちゃんをメロメロにするんだから……!)

切れ長の二重まぶたと目が合う。
その瞬間、智香は一気に怖気づいて身をすくませた。

「お兄ちゃん、えっと……」

「なんだー? まだ愚痴があんのか? 聞いてやるから、話せよ」

「そ、そんなんじゃ……。そりゃ、愚痴はあるけども、いまは……そうじゃなくて」

兄の友哉に仕事の愚痴を散々こぼしては、いつも慰めてもらっていた。しかしいまはそうではない。慰めなんていらない。

「じゃあ、何なんだよ、こんな夜中に……。ああ、のど渇いた」

もとから開いていたワイシャツのボタンをさらにふたつ、みっつとはずしながら友哉がソファにかたひじをつく。起き上がるつもりなのは明白だ。


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2015年06月20日

今宵、お兄ちゃんに夜這いします。04


「まっ、待って! お水、私がとってくるからお兄ちゃんはそのままでいて。目は、閉じてて!」

大声でそう叫ぶと、友哉は怪訝な顔をした。ただ、それだけだ。起き上がるのをやめようとはしない。

「……っ」

息をのんだのは、ふたりとも。
智香はむきだしの乳房を隠すべく両腕を正面に張りつけてうつむいた。
友哉は目を見ひらいて、しかし床に座り込んだままの彼女から視線を逸らしたりはせず、むしろじいっと凝視している。

「……水、くれよ」

降ってきた声には何の抑揚もない。

(あきれられてる……?)

それもそうだ。真夜中にこんな格好で兄を襲おうとしていたのだから。

「智香」

「はっ、はい」

うつむいたまま立ち上がり、すぐにまわれ右をして台所へ駆ける。
智香が身に着けている紫色のキャミソールとショーツは透けている。だからうしろを向いたらお尻が丸見えになる。

(ううっ、見られてる)

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してグラスに注いでいた。
ちらりとうしろを盗み見ると、友哉は相変わらず智香を注視していた。


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2015年06月21日

今宵、お兄ちゃんに夜這いします。05


無駄に大きな尻を見られている。なぜこんな格好をしているのだと深く後悔する。兄を襲うのだという気概はすっかり消えうせていた。

両手でグラスを持って、ぺたぺたと足音を響かせながら友哉のもとへ戻る。

「……どうした? 早く、くれ」

智香はグラスを渡せずにいた。
グラスを差し出したら――胸が、さらけ出されてしまう。
いや、もともとオープンバストだから乳房は露呈しているのだが、いまは両腕で押さえている。

「あ、あの」

兄を見おろす。友哉は「うん?」と静かに答えて首をかしげた。

(どうしてなにも言ってくれないのよ)

あられもない姿の智香にはひとこともツッコミをいれてくれない。そんな友哉が少し憎らしい。
智香はおそるおそる、グラスを差し出した。

彼の手がこちらに伸びてきた。しかしその手の行く先は、水の入ったグラスではない。

「ひゃっ……!」

智香が持つグラスを通り越して、その先のふくらみに友哉の手が触れた。左の乳房の、外側のあたりを指でふにっと持ち上げられている。
手の力が抜けて、グラスを落としそうになる。

「で、おまえは何でそんな格好してるわけ?」

「あ、う、その……」


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