2016年03月19日

クールでウブな上司の襲い方2-10


「あ、あぁ……っ! い、っちゃ、う……。だ、め、だめ……っ!」

 気持ちがよい。そのこと以外はなにも考えられない。
 優樹菜はビクビクと蜜奥を収縮させた。ドクン、ドクンと体の内側が高鳴っている。そんなさなかに柏村は優樹菜の体を前へ押した。

「んっ……! 主任……」

 やんわりと風呂椅子から突き落とされ、鏡の前の造り付けテーブルに両手を、床タイルの上に両ひざをつく。

「ぁ、ん……っ」

 肉竿をねじこまれたのは脚の付け根だ。優樹菜の、とろけきった蜜壷のなかにではない。

「ンン……ッ」

 硬直が過敏な陰唇をこすり立て、いまだに震えを残す花芽を刺激する。

「んぁっ、あっ、うう……ッ」

 これはこれで気持ちがよいのだが、本当に欲しいのはべつのところだ。しかしそれを言い出せるはずもないし、優樹菜にだって理性はある。避妊具がない状態では、絶妙にあやうい時期だった。恥を忍んで、なかに欲しいのだと告げたところで、もしも――ということになったら、彼に迷惑をかけかねない。
 心ここにあらずで悶々とする優樹菜の乳房を、柏村はうしろからぎゅうっとわしづかみにして激しく揉みしだいた。

「ひゃっ! あぅっ、うっ、ンンッ……!」

 急に焦点が合う。目の前の鏡はくもっている。気が逸れていた優樹菜をいじめるように柏村は彼女の体をまさぐる。
 双乳はパンッ、パンッとぶつかり合って音が立つほどに揉みくちゃにされている。
 淫芽をこする肉棒は、もともとあったぬめり気と、このうえなくくすぶる優樹菜の内壁からあふれ出た愛蜜に濡れてよくすべる。
 ときおり蜜口をかすめるのがたまらなかった。そのままひといきにナカへ、とどうしても考えてしまって腰がクネクネと揺れる。
 しかし柏村は彼女の内部を貫こうとはしない。脚の付け根を無難に通り抜けるばかりだ。

「……っ、磯貝、さん」

 彼のうめき声が耳に心地よい。けれど、もの足りない。
 再度、名前を呼ばれた。
 ビュッ、ビュクッと白濁液が湿りきった床タイルに散り落ち、陰茎はドクドクと脈動する。

「……しゅに、ん」

 何気なく、小さな声で呼んだ。たんに呼び返したつもりだったのに、胸を覆っていた彼の両手がビクリと大きく動いたので、逆にこちらが驚いてしまった。
 柏村がすっくと立ち上がる。すると彼は「すまない」とだけ言って、いまだに四つん這いになっている優樹菜をひとり残し、湯船にも浸からず浴室を出て行ってしまった。

(え、え……っ?)

 優樹菜はただ、呆然とするしかなかった。

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posted by 熊野まゆ at 06:14| クールでウブな上司の襲い方《完結》

2016年03月20日

クールでウブな上司の襲い方3-01


 ろくに拭かれていない髪の毛からはポタポタと水滴が落ち、白いワイシャツの肩を濡らす。
 柏村 慎太郎はそのことを気にも留めず――そんなことに気持ちを割く余裕もなく、逃げ込むように自室に入った。
 無数のぬいぐるみに出迎えられると、どんなときでも安心する。しかしいまは、いっこうに落ち着かない。気は昂ったままだが、酔いはすっかりさめていた。

(俺は、なんてことを――……)

 この下宿屋の家主である節子は自分を信用して優樹菜を遣わせてくれたのだ。それなのに、酒の勢いを借りて風呂に連れ込み、ふしだらなことをしてしまった。彼女の気持ちを確かめもせずに。
 節子の大切な孫に対してなんてことをしてしまったのだろう――と、欲望を外へ吐き出したあとでわれにかえった。腹の底に氷水を落としたような心地だった。
 窓のカーテンは開けっ放しだった。下弦の月明かりしかない薄暗い部屋のベッドに慎太郎は倒れ込み、ベッド上のぬいぐるみをぼんやりと眺め、さらなる自責の念に駆られる。
 せめて彼女の同意があれば――。

(……嫌がられているわけでは、なかった)

 いや、そういう問題ではない、とすぐに自分自身が否定する。節子に顔向けできないことをしでかしたということには変わりない。

 慎太郎が岩代荘にやって来たのは彼が18のときだった。
 母親の温もりを初めから知らず、あとからできた母親にもなじめずにいた慎太郎にとって節子の存在は救いだった。
 彼の部屋に、日に日に増えていくぬいぐるみを節子が言及することはなく、慎太郎自身がこの状態をどう思うかと訊いても「趣味は人それぞれだから」と軽く受け流すだけだった。
 それでいて、就職先に悩んでいるときには仕事の適正についてともに真剣に悩み、第一希望の会社に内定すると自分のことのように喜んで、赤飯まで炊いてくれた。
 慎太郎にとって節子こそが母だった。そしてここは、あたたかな陽が射し込む縁側のような、心地のよい場所。ぬいぐるみの収集癖も、これでも落ち着いたほうだ。

(失望、されたくない……)

 節子が骨折し入院することになって、本当は毎日でも見舞いに行きたかったのだが、多忙な自分を気遣ってか節子は「たいしたことはないのよ。見舞いなんて必要ないからね」と釘を刺してきた。
 節子が岩代荘からいなくなって、やって来たのが優樹菜だ。
 彼女は思いのほか家庭的だ。しかし、節子のように母を重ねることは当然、ない。自分よりも年下だからというのもあるが、それよりもなによりも――ともに過ごしていると、劣情をかき立てられる。彼女はとても妖艶で、しかしどこかまだ少女のような可憐さを持ち合わせている。

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posted by 熊野まゆ at 05:15| クールでウブな上司の襲い方《完結》

2016年03月21日

クールでウブな上司の襲い方3-02


 優樹菜は自分に対して好意的だと、思う。
 自分のことをどう思うかと彼女に尋ねたとき、妙にとりつくろったりせずあのまま返答を待っていればよかった。この部屋のことを追加したのは蛇足だった、と後悔している。

(好きですよ、か……)

 居間で飲み交わしていたあのとき、優樹菜の言葉に一瞬だが喜んだ。結局は勘違いだったが、それがくまっぷまんのことだとしても嬉しいのには違いない。
 しかし、こんな――ぬいぐるみにあふれた異様な部屋でうずくまっている意気地なしの男を、彼女は受け入れてくれるだろうか。
 拒まれるのが怖くて想いを伝えることができない。それだけならまだしも、料理の味すらうまく褒めることができない自分に心底嫌気がさしてくる。

(だからといって、アレはいけない。極端すぎる)

 腰もとにあった右手を顔の前まで持ってくる。いまでも如実に思い出せる。感覚が、残っている。彼女の柔らかく温かな乳房の感覚が。
 喘ぎ声にしたって、同じだ。思い出しただけで下半身がムズムズと熱を帯びてきてしまうから、どうしようもない。
 風呂場で自分は理性的ではなかった、とそう思うのだが、よくよく考えると矛盾している。
 酔って我を見失っていたのは確かだが、彼女のナカを貫いてぶちまけてしまわなかったのは、頭ではわかっていたからだ。この行為が、身勝手なことなのだと。
 慎太郎は右手で顔を覆った。なにも考えたくない、といわんばかりに。

★☆★

 風呂から上がった優樹菜はパジャマ姿で自室の前の廊下をうろついていた。はたから見たらたいそう挙動不審だろう。

(うーん、どうしよう……。どうするべきか……)

 柏村主任はおそらく部屋にいる。急な用事を思い出して、あわてて浴室を出て行ってしまったのかとも思ったけれど、少なくとも外出するような用事はなさそうだ。

(主任の気持ちが、知りたい)

 これまで優樹菜は『遊んでいそうだ』と男女問わず陰口を叩かれることがしばしばあった。いま彼の部屋に夜這いに行ったら、主任にもそういうふうに思われるかもしれない。

(このまま自分の部屋に戻って……。明日から、またふだんどおりにするの?)

 自分自身に疑問を投げかけ、しかし頭をぶんぶんと横に振って、後ろ向きな考えを払拭した。本当にそれが『後ろ向き』なことなのか、定かではないが。

(私の気持ち、ちゃんと伝えよう。後悔したくない。タイミングを、逃したくない――)

 優樹菜はペタペタと足音を響かせて廊下を歩く。柏村の部屋の前で止まり、ひかえめに二回、扉をノックした。
 すうっと息を吸い込み、ゆっくりと吐き出したあとで意を決して口をひらく。

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posted by 熊野まゆ at 05:07| クールでウブな上司の襲い方《完結》

2016年03月23日

クールでウブな上司の襲い方3-03


「……主任、まだ起きていらっしゃいますか」
『……ああ』

 彼の声はかすれていた。寝起きか、あるいは泣いたあとのように。
 やはり迷惑だろうかと一瞬だけ尻込みしたが、声を掛けてしまった以上あとには引けない。

「入っても、いいですか?」
『……鍵はかけていない』

 入ってもいい、という意味だととらえて、静かにドアノブをまわす。年季の入った銀色のノブはとてもつめたい。ぞくっ、と悪寒のようなものが背筋に走ってしまった。

(……っ。ドアノブにひるんでる場合じゃ、ない)

 同居生活はすでに半分を過ぎているわけだし、浴室での出来事をうやむやにしたままあと半月を終えたくはない。あわよくばラブラブしながら過ごしたい。
 優樹菜はきゅうっと唇を一文字に引き結んで扉をひらいた。
 部屋のなかは薄暗かった。月明かりに照らされているのは窓際に並べられたぬいぐるみたち。マントを羽織った勇敢な様相のクマたちに、いっせいに見つめられたような気がして少しだけギクリとする。

(落ち着け、私)

 一呼吸おいて、あらためて部屋のなかを見る。柏村はベッドにうつ伏せになっていた。
 カーペットの上を裸足で静かに進み、ベッド脇に立つ。柏村はなにも言わない。彼の横顔は月明かりのもとでも麗しい。

「――主任を、襲いにきました。さっきのだけじゃ、足りないです……っ」

 優樹菜はひと息に言った。柏村が目を見ひらく。

(ああ、私はいま何て言った?)

 想いを伝えるつもりだったのに、いま思っていることがそのまま口から出てしまった。
 それもこれも、彼が麗しすぎるせいだ。
 黒い髪の毛は濡れていて艶っぽく、瞳は儚げに潤んで見える。彼は年上だけれど、このときはなぜだか守ってあげたくなった。なにから守る必要があるのかすらわからないが、とにかく庇護欲をくすぐられた。

「……磯貝さん?」

 柏村の声で優樹菜はハッとわれにかえる。

(そうだ。襲いに来たとしか言ってない。これじゃあただの変態だよ)

 不埒な女で終わってはいけない。大切なことを、まだ伝えていない。
 今度は慎重に、頭のなかで言葉を整理して、選んで発する。

「――はじめは、顔でした。でも、主任の……クールで真面目なところ、すごく好き。くまっぷまんが好きなんだって知って、私……すごく嬉しかった。もっと、知りたいんです。いろんなあなたを」

 よく考えて発した言葉だが、噓偽りはない。
 ギシッ、とベッドがきしむ。優樹菜は柏村に覆いかぶさり、彼の濡れた瞳をのぞき込んだ。
 見つめ返される。柏村の瞳は揺れていた。

「俺も、きみの……」

 ドク、ドクンと期待に胸が高鳴る。

「見た目は派手だが真面目なところが、好きだ。こうして……積極的に色仕掛けをしてくるところも」

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posted by 熊野まゆ at 05:17| クールでウブな上司の襲い方《完結》

2016年03月25日

クールでウブな上司の襲い方3-04


 彼の言葉がすぐには頭のなかに入ってこなかった。薄暗闇のなか、優樹菜はパチパチとまぶたを瞬かせる。

「ん、ん……っ!」

 後頭部を押さえつけられるやいなや唇を塞がれ、貪るような情熱的なキスに見舞われた。先ほどの彼の言葉をかみしめるいとまがない。
 ベッドについていた両腕に、初めは力を込めて自分自身を支えていた優樹菜だが、甘くねっとりとした口付けをほどこされ、しだいに自身を支えられなくなって柏村の上に寝そべるかっこうになった。

「……ほかの男にも同じようなことを言ったりしてないだろうな」

 ほんの少しだけ唇が離れ、尋ねられた。優樹菜は即答する。

「し、してません! 断じて」
「………」

 ちゅっ、と一瞬だけ唇をついばまれる。

「こんな部屋にいる男のことが、本当に好きなのか?」

 先ほどよりもさらに早く、答えを返す。

「好きです。襲いに来ちゃうくらい」

 柏村が笑った。やれやれというような、あきれ笑いだ。

(や、やばい……っ)

 彼の笑顔は破壊力バツグンだ。体のあらぬところがジトッと湿り気を帯びてくる。淫猥な反応を、否が応でもしてしまう。
 ふだんの彼は本当にクールで、笑顔なんてほとんど見ることがないので、ギャップ萌えすぎて瀕死だ。

「……どうした?」

 彼に欲情していることを優樹菜は隠さない。

「主任が、笑うから……っ! うぅっ……。好き、です。大好き……。あなたのすべてが、欲しい」

 柏村の表情が妙な具合にゆがんだ。

「……それは俺のせりふだ」

 パジャマのすそからスルリと大きな手がくぐり込み、優樹菜の素肌をなでる。

「体が冷えている」
「主任だって」
「……これから、暑くなるか」

 季節的なことを言っているのか、それともこれからの行為のことを指しているのかわからなかった。
 肩甲骨のあたりにあった手のひらが腰もとまで戻り、パジャマのすそをつかんで引き上げた。

「ひゃっ!?」

 わき腹をつかまれ、体を押し上げられる。柏村は優樹菜のパジャマのすそを胸の上まで引き上げた。彼自身はベッドの下方へ動く。

「あ、あのっ……!」

 優樹菜の頬がとたんに赤くなる。ブラジャーは身につけていなかった。彼の目の前に乳房をさらし、下から見上げられているのが恥ずかしくてたまらない。それに――。

「ま、待ってください。これじゃ、主任の顔が……見えない」

 胸の上でもたついているパジャマが優樹菜の視界を狭くしている。

「見えなくてもいいじゃないか」
「……いや、です。だって――」

 これではいつ触れてくるのか、彼がなにをしようとしているのかサッパリわからない。

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posted by 熊野まゆ at 06:32| クールでウブな上司の襲い方《完結》


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