2016年05月29日

雨の香り、蜜の気配01


 降水確率はゼロパーセント。傘は持たずに出掛けた。ふだんはバッグのなかに常備している折りたたみ傘も、外回りをするのには邪魔だから置いてきてしまった。けれどそういう日に限って、雨に降られてしまうものだ――。

「止みそうにないですね……」

 シャッターがおりた店の軒先で雨宿りをしながら雑賀 雫(さいが しずく)はポツリと言った。

「そうだな」

 降りしきる雨を眺め、そう短く返したのは雫の上司である蓮沼 裕貴(はすぬま ひろき)だ。
 夕方、シャッター街の先にある町工場で融資の商談を終えたふたりは工場を出たところで雨に降られてしまった。
 近くにはコンビニひとつない。傘を持たないふたりは閑散とした商店街の一角で雨宿りをしていたが、待てども雨は止みそうになかった。

「……私の家に来ます?」
「ああ、そうする。今日はもう切り上げよう」

 そう言うなり蓮沼は電話をかけた。本店営業部あての電話だ。直帰する旨を伝えている。

「――行こうか」
「はい」

 幸いここから徒歩数分のところに雫の自宅があった。最寄りのコンビニよりも近く、傘を買いに行くよりも手っ取り早い。
 雨のなかを連れ立って歩く。なるべく軒下を通るようにしたが、それでもやはり濡れてしまう。
 早足で歩くこと数分、自宅に着くころにはスーツのジャケットはもちろん、なかのシャツとそれから下着までぐっしょりと濡れていた。

「シャワー、浴びていってください」

 濡れた手で自宅マンションの玄関扉を開けながら雫は言った。蓮沼は「ああ」とだけ答えた。
 彼がここへ来るのは初めてではない。もう幾度となく招いたことがある。

「ずぶ濡れになっちゃいましたね」

 脱衣所へ直行し、蓮沼に背を向けて濡れたジャケットを脱ぐ。

「……雫」

 不意に名を呼ばれた。しかし振り向く間もなく、たくましい腕にうしろから体を覆われる。

「……っ! あ、の」

 香るのは雨。
 彼の両手が透けたワイシャツをまさぐる。
 秘めたところには蜜の気配が漂う。

「待って……。シャワーを……浴びて、から……」

 水を含んだ白いワイシャツが、蓮沼の手のひらによっていっそう肌に張り付く。決して快適な状態ではないというのに、温かく大きな彼の手にまさぐられているせいで心地よく思えてくる。

「ん……待てない。下着が透けてるのがすごくそそられる」
「ぁっ……!」

 シャツごと下着と一緒くたに両のふくらみを持ち上げられ、つい高い声を出してしまう。

「でも、このままじゃ……風邪、引いちゃいますよ。お互いに」
「温め合えば平気だろ」
「んっ……」

 首すじをちゅうっと吸われた。彼の唇は熱く感じた。雫の肌が冷えているせいだ。

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posted by 熊野まゆ at 05:41| 雨の香り、蜜の気配《完結》

2016年05月31日

雨の香り、蜜の気配02


(でもきっと、すぐに彼と同じか……それ以上に熱くなる)

 体の内側、とくに下のほうはすでに熱を帯び始めている。表皮まで火照るのは時間の問題だ。
 蓮沼は雫の黒いショートヘアに頬ずりをして彼女のワイシャツに片手をくぐり込ませた。背中からだ。湿ったブラジャーのホックをプチンと静かに外す。

「っん……。裕貴、さん……?」

 濡れそぼって重くなっているワイシャツは脱がせてくれればよいものを、彼はそうする気がないようだ。前ボタンを二、三外しただけの状態でシャツごとふくらみを揉みしだき始めてしまった。
 ホックを弾かれたことでゆるんだブラジャーは揉みくちゃにされ、乳房を覆いきれなくなる。

「ぁ、っう……!」

 ブラジャーの合間から顔を出した薄桃色のつぼみを、蓮沼はシャツ生地ごしに指で丹念に押さえつけた。ムクムクと勃ち上がったそこを、咎めるようにぎゅっ、ぎゅうっと押し込めている。

「はぁっ、あ……ッ」

 雫は脱衣所の壁に両手をついた。手のひらはすでに乾いているから、壁を濡らすことはない。
 身をよじり、振り返って彼を見やる。するとすぐに唇が重なった。

「んくっ、ぅ」

 5つ年上の上司である蓮沼とは付き合ってもうすぐ1年になる。黒い髪の毛はいつも短く切りそろえられ、几帳面かつ真面目そうな見た目とは裏腹に彼は「こういう」とき非常に情熱的だ。否定的な意味で言っているわけではない。むしろ――。

「ふぅっ、んっ……!」

 巧みな舌にはいつまで経っても翻弄されてしまう。口腔を這いまわる舌はねっとりと熱く、それで上顎をくすぐられると本当にたまらない。体の疼きが度を増して、ぐずぐずと焦れてくる。

「ンンッ、ふ……」

 蓮沼の指がせわしなく動いて乳頭を刺激する。じかに触れてほしくてたまらない。雫は深い口付けと指戯にもだえてもじもじと太ももの内側を擦り合わせた。

「んくっ」

 唇が遠のく。ジジジ、というのはスカートのファスナーがおりる音。ゆるんだものの、スカートは簡単には落ちない。太ももに張り付いたグレーのスカートを、蓮沼は両手でズルズルと膝の下あたりまでずらした。それから雫の股間に背後から膝を割り入れ、グリグリと押す。

「……んぁっ! あっ、ぅ……!」

 ショーツごしに割れ目を膝でえぐられている。そこが濡れているのは雨のせいなのか、あるいは内側からの分泌物によるものなのかわからない。
 彼の両手がふたたび乳首をさいなみ始める。下半身への刺激とあいまって、快感は高まるばかりだ。喘ぎ声が止まらなくなる。

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posted by 熊野まゆ at 05:05| 雨の香り、蜜の気配《完結》

2016年06月02日

雨の香り、蜜の気配03


「ふぁっ、ぁあ……!」

 もどかしい快感がじわじわと心身を侵していく。衣服の上からの刺激では物足りなくなって、甘ったるい声を上げてねだるものの、彼は一筋縄ではいかない。

「ほら、どうされたいのか言ってみろ」
「はぁっ、ぁ……ッン、くぅっ」

 具体的にどうしてもらいたいのか言わなければ、してくれないのだ。意地悪なひとだと思うけれど、そういうところがよりいっそう官能に火をつけるのには違いない。

「ち、乳首……ちゃんと、じかに……ギュッとして、ください」
「へえ。それから?」
「そ、れから……ぁっ、あ!」

 ワイシャツごしに薄桃色をガリガリと引っかかれ、頭のなかが真っ白になってくる。言葉をつむぐどころではないというのに、蓮沼は耳もとに息を吹き込みながら「早く言うんだ」と急かしてくる。

「あ、ぁ……っ! も……めちゃくちゃに、して……!!」

 まわらない思考回路がなかば無意識にそんな言葉を発した。クスッと彼が笑ったのが、耳に吹きかかった息によってわかった。あきれ笑いか、あるいは嘲笑か。どちらにせよ、蓮沼は愉しんでいる。彼は雫をいじめるのが大好きなのだ。

「めちゃくちゃに、ねえ……?」

 愉悦まじりの笑みを浮かべ、蓮沼はようやく雫の衣服を脱がせ始めた。おそろしく緩慢にワイシャツのボタンをプチプチと外していく。しかし彼が拭い去ったのはシャツだけ。真っ白なフリルレースのブラジャーとショーツには手をつけなかった。

「いつも清純そうな下着をつけてるわりに、きみは淫乱で我慢ができない。すぐに音を上げて……欲しがる」
「うぅっ……」

 湿り気のある指先で、同じように湿っている肌を――乳輪に弧を描かれている。両方ともだ。素直にねだったところで、結局は焦らされてしまうのでは意味がない。けれどだからといって頑なになっていても同じことだ。やはり、いじめられる。

「だって……! 裕貴さんが……っ。意地悪、だから」

 泣きべそをかいて彼を責めても、結果は同じ。

「体たらくを俺のせいにするのか? 責任転嫁はいけないな」
「ぁうっ、ンン……ッ!」

 蓮沼の片手が下半身に伸びて、ショーツの上から淫芽を押す。つかず離れずの微妙な刺激は、もはや生殺しといっても過言ではない。
 乳首にしても同じだ。いただきを避けてフニフニと指で乳輪をかたどられている。
 身の内が、下半身がありえないくらい熱を帯びて、表皮にもそれが伝わってきた。とにかく暑い。雨に降られて風邪を引き、熱を出してしまったのかとさえ思ったが、たぶん違う。この熱はすべて彼のせいだ。

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posted by 熊野まゆ at 04:06| 雨の香り、蜜の気配《完結》

2016年06月07日

雨の香り、蜜の気配04


「裕貴さん……っ」

 雫は彼の名を何度も呼んで急かした。しかしまだ、じりじりと焦燥感ばかりがひた走る愛撫ばかりだ。

「い、やぁ……っ。裕貴さん、早く……。はやくっ……!」

 腰をくねらせて哀願する。はしたないとか、そういう感情はとうの昔に闇のなかだ。

「……そうして可愛らしくねだってくる淫乱なきみが、俺はたまらなく好きだ」

 小さな、とても小さな声でそうつぶやき、蓮沼は雫のショーツをくるくると丸めながら下へずらし、あられもない状態の秘所に指を突き込ませた。

「ひっ、ぁぅっ!」

 ゴツゴツとした細長い指がズンズンと無遠慮に狭道を進み、最奥を穿って引っかきまわす。
 雫は乾き始めた黒いショートヘアを振り乱して身もだえした。
 ようやくつまみ上げられた乳頭はすでにこれ以上ないというくらいに硬くしこっていて、蓮沼はそこをコリコリと――いや、ゴリゴリと力強く二本の指でひねった。

「ぁぁんっ、はっ、ぅあっ……!!」

 少しくらい痛くされても平気だった。むしろ気持ちがよいと感じてしまう自分にあきれる。それでも、ぐちゃぐちゃに体内をかきまわされて乳首をいたぶられると頭の芯が痺れてきて、身も心も快感一色に染まる。

(ああ……。もう、だめ)

 すぐにでも達してしまいそうだと思った。けれどそれを素直に告げはしない。寸止めされてしまうからだ。

「ぁっ、はぁっ、ぅ……っ」

 なるべく声を抑えて、感じていないふりをする。中途半端にはされたくない。
 しかしそうしてあがいたところで、彼をだませた試しがない。

「……雫。イきそうなんだろ?」

 ビクッと肩を震わせたあと、雫は首をぶんぶんと何度も横に振った。

「きみの嘘はわかりやすいんだ。いいかげんに自覚したらどうだ? 声を抑えても無駄だってことを」
「ゃっ、あぁああ!」

 蜜奥をかき乱されることでくすぶっていた花芽をギュムッと豪快に指で押しつぶされ、声を抑えるどころではなくなった。打算や理性はすべて吹き飛んで、ひたすら喘ぐだけのメスになる。

「あっ、んぁっ、う……! イッちゃ、ぅ、うう……!!」

 失言だった。絶頂しますと宣言なんかしてしまったら、どうなるかわかっていたのに――。

「……!」

 急に一切の指戯がなくなった。パタリと止んでしまった。

(もう少しだったのに……!)

 雫はわなわなと唇を震わせ、目にはうっすらと涙を浮かべ唇を噛み締めた様相で振り返った。蓮沼はしたり顔になる。

「その表情が見たくてつい、な……。きみひとりじゃイかせたくない。悪いとは思ってるさ」

 とんでもない。なにをどう良いほうに解釈しても、ありえない。彼が少しも「悪い」などと思っていないのは明白だった。そんな顔つきをしている。

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posted by 熊野まゆ at 02:30| 雨の香り、蜜の気配《完結》

2016年06月09日

雨の香り、蜜の気配05【完】


「意地悪、いじわるっ……!」

 顔をふたたび脱衣所の壁のほうに戻してブツブツと愚痴を言った。
 絶頂寸前でおあずけにされてしまったカラダは、いまやどうしようもない状態になっている。愛液が、トロトロと太ももを伝い落ちているのがよくわかった。

「……っ、ん!」

 空虚さに戸惑ってヒクヒクと震える身の内に、猛りきった肉杭がジワジワとじれったさをともなって打ち込まれていく。

「雫はコッチよりも指のほうが好きなのか?」
「ぁ、はぁっ……! そ……いう、わけじゃ……なくて……。んっ、うぅっ」

 不満なのは、寸止めされたことに関してだけだ。彼の硬直に貫かれるのが嫌なわけでは決してない。腰が揺れてきて、肉棒を誘い込むような動きをしてしまうのは体も悦んでいる証拠だ。

「はあ……。あいかわらずだな、きみのナカは」
「……っ? それって、どういう意味――っあ、んぁぁッ!」

 話の途中で急に肉茎を突き動かすのはやめてもらいたいものだ。舌を噛んでしまいそうになるし、まさしく不意打ちだ。達しかけていた体には刺激が強すぎる。

「やぁっ、あっ、ふぅぅっ……!」
「まだイクなよ?」

 抑制するような言葉とは裏腹に蓮沼は楔を激しく出し入れして雫をまくしたてる。ぬちゃっ、ぐちゅちゅっという水音が卑猥でならない。

「むっ、り……! ひぁっ、ぅう……ンンッ」

 雨で湿っていた体が、いまは汗と蜜でしとどに濡れている。なんの役にも立っていないブラジャーとショーツが邪魔くさい。

「あぁぁっ、ぅう――……!!」

 暑くて、熱くて。耳に吹きかかる愛しい彼の息が心地がよくて、官能的で。どれだけ我慢しても、絶頂せずにはいられなかった。
 ビクッ、ビクンと内側を震わせる。彼のそれもどうやら達したようで、ありありと脈動している。
 ふたりはズルズルと床に座り込んだ。
 蓮沼が雫の顔をのぞき込む。頬にちゅうっと吸い付いたあと、彼女の体をクルリと回転させた。
 額に汗をかいた彼と向かい合う。

「――いまからじゃジューンブライドには間に合わないか」

 ポツリと言われ、面食らう。雫はパチパチと何度もまばたきをした。

「……なんの話ですか?」
「そろそろ頃合いかと思うんだ。俺は今年で34になるし」
「え、っと……それって、あの」

 パクパクとせわしなく動く雫の唇に、蓮沼はそっと人差し指を押し当てて言う。

「だから――……」

 彼の口が率直なプロポーズの言葉をつむぐのを、雫は惚けた表情で見つめていた。

FIN.

お読みいただきありがとうございました!

ふたりが出会ったときの話などなど、もうちょっとふくらませて書けたらイイなぁと思っておりまして、ただいま構想中です。

熊野まゆ

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posted by 熊野まゆ at 06:25| 雨の香り、蜜の気配《完結》


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