2016年12月11日

伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 序章01


 真っ白なレース地のナースキャップが頂きに飾られた亜麻色のシニヨンはわずかばかり乱れていた。
 早朝から慌ただしく働いていれば夕方には髪型が崩れてしまうのは当たり前といえばまあそうだ。途中で髪の毛をまとめ直す時間すらなくエリス・ヴィードナーは毎日を忙しく過ごしていた。


「今月いっぱいでお暇を頂戴したいのですが」

 ヘーゼルナッツ色の瞳が一直線に白衣の男へ向けられる。
 診察室にはエリスと白衣の男――ジェラルド・アッカーソン、ノースヴェイン伯爵のふたりだけだった。今日の診察はすでに終了している。

「……なぜだ」

 椅子に腰掛け、カルテの整理をしながらジェラルドはうなるように言った。その視線はエリスではなくカルテを射ている。

「忙しすぎて見合いするひまもないからです」

 言うと、彼が鼻で笑ったのがわかった。

「そんなもの、理由になっていない」

 ジェラルドは嘲笑して言葉を次ぐ。

「それに、そんな貧乳じゃあもらい手なんてないと思うが」
「――っ!!!」

 感情を押し殺し、無表情を貫いていたエリスだが彼のその一言で眉間にシワが寄り、唇の片方がつり上がりヒクついた。堰を切ったように悪言を吐く。

「ほんっと先生は失礼な男ですね! その口をどうにかしなくちゃお嫁さんなんてこないですよ!」
「俺はさほど結婚願望はない」

 素知らぬ顔でトン、トンッと数枚のカルテを机の上でそろえ、まるで面白いものを見るような目でジェラルドはようやくエリスを見やった。彼女が憤るのを待っていたかのように。

「それより、その貧相な胸を大きくしてやる」

 彼の発言にエリスはますます憤然として言い返す。

「豊胸手術でもしてくださるんですか?」
「それは、高くつくがいいか? きみの給金じゃとても払えないと思うが」

 エリスはきゅうっと唇をかみしめた。こうして彼と口論になることはしばしばあるのだが、勝てたためしがない。
 ジェラルドが彼の母親のあとを継いで医者になったのはいまから7年前、彼が18歳のときだ。それから間もなくしてジェラルドは彼の父親から伯爵位を譲り受け、医者と領主という二足のわらじを履くことになった。
 ノースヴェイン伯爵邸で働くこと2年、エリスはメイド兼看護助手として多忙を極めている。
 診察が終わったあとはジェラルドの身の回りの世話に追われ、ここのところは領主の仕事も手伝わされている。それだけでも体がいくつあっても保ちそうにないというのに、くわえてもうひとつ、彼に強いられていることがある。じつのところそれこそが、いまの仕事を辞めたい最たる理由だ――。
 エリスは「ふうっ」と大げさにため息をついて窓ぎわへ向かった。うっぷんを晴らす勢いで窓のカーテンをシャッと両側から素早く閉める。

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posted by 熊野まゆ at 08:28| 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま《完結》

2016年12月12日

伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 序章02


 ガタ、タタという音は椅子が横へ動くときのものだ。続いてカツカツと靴音が聞こえてきた。音はしだいに大きくなっていく。

「……っ!」

 振り返るよりも先に逃げ道を塞がれた。ジェラルドはエリスの体をうしろから羽交い締めにしている。

「先生……っ」

 わき腹のあたりに強く絡みついている彼の腕をガシリとつかんで引き離そうとするものの、どれだけ力を入れてもビクともしなかった。
 このあと何をされるのか容易に想像がつくので、腕から逃れるべくあきらめずに奮闘する。

「や……っ。いやです、先生」

 身をよじって拘束をゆるめようと試みる。しかしやはりジェラルドの腕はエリスを放そうとしない。腕の先が、こぢんまりとしたふたつのふくらみへと向かった。

「……っあ! やめて、ください!」
「大きくしてやると言っただろう」

 エリスは「ぅっ」と小さくうめき、うつむいた。あるのかないのかわからない主張の弱い胸を両方とも手のひらで覆われ、揉みまわされている。
 首を何度も横に振りながらエリスはなおも抵抗する。

「こんな……んっ、大きく、なんて」

 いくら揉んだところで胸はさして大きくならない。そんなことはとうの昔に自分で試しているし、効果がないことも実証済みだ。
 捕らわれてなすすべなく小さく暴れる華奢なエリスの耳もとにジェラルドが顔を寄せる。

「自分でするのと他人にされるのでは効果が多少は異なる。感じているのなら、尚更」

 エリスがあきらめきっているのを見越した発言だ。

「ぁ……っ!」

 紺色の看護服は節くれだった手に揉みくちゃにされてシワだらけだ。伯爵からあてがわれたこの服は生地が上等なので、彼が手を放せばシワは伸びる。したがってのちの業務に支障はないのだが、そういうことではない。医者が、診察室で、看護助手の小さな胸を揉みしだいているのは大問題だ。そしてそれを気持ちがいいと感じてしまっている自分自身も。
 官能的に反応する体を否定するべく、いっそう大きく首を左右に何度も動かした。

「ち、が……っ。感じて、なんか……!」

 ――嘘だ。
 本当はもどかしくてたまらない。絶妙な加減で服のなかのシュミーズが乳頭をこすっている。それがチリチリとした微細な快感を生み出していてたまらないのだ。じかに、もっと明確に触れてほしいとつい願ってしまう。

(わたし……こんなふうじゃなかったのに)

 ジェラルドにこうして性的なところをまさぐられるのは初めてではない。初めのころは、本当に嫌だった。それなのにいまはどうだ。

「は、ぁ……っ」

 自分でも驚くような甘い声がひとりでに出てくる。信じられない。

「ぁ、あっ」

 彼の手をつかんでいられなくなった。服の上から異常な的確さで敏感なトゲをガリガリと引っかかれている。
 嫌だ、止めてと抵抗していたはずなのに、どんどん流されていく。快楽の深みへといともたやすく誘《いざな》われ、はまり込んでしまう。

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posted by 熊野まゆ at 08:36| 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま《完結》

2016年12月13日

伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 序章03


「ぅ、んんっ」

 エリスがもだえ始めると、ジェラルドは胸のいただきをいじるのをやめて服のくるみボタンに手を伸ばした。両側に白いレースの襟がついた一番上のボタンを皮切りに次々とはずしていく。

「あ、ぁ」

 このままではいけない。そうわかっているのに彼の手を払いのけらない。ボタンがはずされていくのを止められないのはきっと、これまで幾度となく体に快楽を刻み込まれてきたせいだ。
 エリスはかろうじて右手だけをジェラルドの手の甲に添わせ、もう片方はカーテンごと窓に張り付けて支えにしていた。

「体の力を抜け。その貧相な胸を庭師に見られてしまうぞ」
「え……っ!?」

 ハッとする。快さのせいでぼやけていた視界が彼の一言で明瞭になり焦点が合うと、閉じ合わせたはずのカーテンに隙間ができているのがわかった。手に力が入っているせいでカーテンにシワが寄り、庭が垣間見えている。

「――それとも、見せつけたいのか?」

 ガクンッと体が前へ揺れ動く。

「やっ、ぁ……ッ!! なに、するんですか……!」

 頬に触れるのはカーテン生地。さらけ出された乳頭をこするのは、つめたい窓ガラスだ。ジェラルドはエリスの体を窓ガラスに押しつけている。

「興奮してるんだろう。いつにも増して硬くなってる」
「……ゃっ!」

 顔は横向きにカーテンに添い、乳房の先端だけがえんじ色のカーテンを避けて窓面に当たっている。胸とガラス面のあいだにはほとんど隙間がないというのに、ジェラルドは下方から指をくぐり込ませて乳頭の感触を確かめたのだ。

「こ、ういうのは……やめて、くださいと……わたし、何度も申し上げて……っ、います」
「そうだったか?」

 本当に庭にだれかいるかもしれないと思うとゾッとする。顔は外からはわからないが、胸もとが窓ガラスに張り付いているなんて、不可思議な光景に違いない。ジェラルドはこういう――羞恥心を反道徳的にあおるようなことをたびたび仕掛けてくる。

「……気持ちいいくせに」

 ほとんどゼロ距離で、甘さを帯びたかすれ声を耳のなかに吹き込まれ、ぞくんっと秘所が淫らに反応する。

「そ、んな、こと」

 官能的な反応を見せる体には見ぬ振りをして否定の言葉を口にしようとしていると、証拠を見せろと言わんばかりにスカートをめくられなかのドロワーズを引き下ろされた。

「そんなことは、あるだろ」
「な、い……ですっ」

 太ももの内側をモゾモゾとうごめくのは意地の悪い男の武骨な指。あふれた蜜の軌跡をおおげさに蛇行することでわざとらしく誇張して撫でたどっている。

「っは、どの面を下げて言ってるんだ」

 ジェラルドは皮肉めいた笑みを浮かべ、蜜濡れの裂け目を指で割った。

「ぁっ……!」

 ちゅぷんっと水っぽい音が立つのは自分ではどうしようもなくて、しかし素直に認めたくはないので脚をぎゅうっと閉じて抵抗する。

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posted by 熊野まゆ at 08:16| 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま《完結》

2016年12月14日

伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 序章04


「きみはいつも往生際が悪い」

 ジェラルドはエリスのむき出しの乳頭をうしろから体ごとつかんだ。
 窓ガラスから体が離れたのはよかったけれど、ジェラルドにとらわれてしまった。

「ぅあっ、ん……!」

 彼の右手が秘裂をツウッと撫で、花芽の脇をこすり立てる。
 エリスは体を仰け反らせて彼の手首を両方ともつかんだ。

「まさかとは思うが抵抗しているつもりか?」
「そ、う……ですっ。それ以外に、なにが……ッ」
「俺の手首をつかんで自分のいいようにしているようだ。端的に言えば、俺の指を使った自慰」
「なっ!」
「使ってくれてかまわないが?」
「わ、私……そんなつもりは」

 こうなると、彼の手首を放さざるを得ない。
 エリスが手を放すと、ジェラルドは動きを活発にした。ふくらみの硬く尖った先端を指でこねくりまわし、もう片方の手では蜜口をまさぐる。

「ひぁっ、ぁッ」

 角ばった指先が蜜口をえぐり、乳頭は人差し指で押しつぶされている。こうして二箇所をいじられると、快感がふくれ上がってきて理性を損なわせる。体のナカへ指が沈んでいくことに快さしか感じなくなるのだ。

「はぅっ、んッ……ふ、ぁうっ」

 屈してはいけないと思うのに、蜜壷をぐちゅぐちゅとまさぐられて身もだえする。

「やっ、あ……やめ……んっ、やめて……! ぁ、ああ」

 ジェラルドはエリスの言い分を聞き入れて指を引き抜いたのではなかった。愛液にまみれた中指を淫核に押し付け、蜜を押し広げる。

「やめて、ね……。それはきみの真意か? もしそうなら極めて愚鈍だ。大洪水を起こしいてるというのに無自覚とは。本当に、鈍いにもほどがある」
「ひぁっ!! あ、ぁふっ」

 二本の指で下半身の小さな豆粒をキュッと挟まれた。それだけならまだしもグイグイと引っ張り上げられ、嬌声が愛蜜とともにあふれ出る。

「思い知れ。自身がどれだけ淫猥な性《さが》なのかを」
「んんんっ、ふ……!」

 蜜があふれ出るそこにジェラルドは中指でふたをした。花芽のほうは親指で押しなぶる。
 高みへ昇りつめているのがわかる。指の動きは小刻みで、そして素早い。あともう少しで、達してしまう――。

「……っ」

 絶頂はできなかった。ここのところジェラルドはいつもそうだ。達してしまいそうになるとやめてしまう。だから彼の指で絶頂を味わったことはない。

「せ、んせ……っ」
「こういうときは名前を呼べと言ってるだろ」
「ジェラルド、様……ッ」

 呼びかけに応えるようにジェラルドは腰を突き動かし、いつの間にかさらけ出ていた猛りのある肉茎を無遠慮にねじ込み突き上げた。

「あぁっ、あ――!!」

 達する寸前だっただけに、挿入されただけで身の内が打ち震える。

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posted by 熊野まゆ at 08:20| 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま《完結》

2016年12月15日

伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 序章05


 エリスが絶頂したとわかっていてもジェラルドは彼女のナカを執拗に突きまわす。

「は、ぁっ……んっ、ァ、うッ」

 達したばかりで敏感になっているところにこの仕打ちだ。彼のことをひどいと思ういっぽうで、快楽の泥沼に足を取られて引きずり込まれていく。

「今日はきみのナカに安全にぶちまけることができる貴重な日だからな……。最後までしっかり楽しませてもらう」
「んふっ、ぅっ!」

 月のものの周期を把握されているのが悔しい。それも、かなり正確にだ。さすが医者と言うべきか、申告しているわけではないのになぜわかるのだろうと疑問は常にある。

「考え事をしているときのきみは眉間にシワが寄っているのを知っているか? そのシワ、癖になると消えなくなるぞ。もう手遅れかもな」
「んなっ……ぁ、ふっ!」

 ジェラルドはクツクツと笑いながら腰の動きを速める。
 激しくなった律動に耐えるべくエリスは窓の桟についていた両手に力を込めた。指先が白くなっている。それ以上、力を入れたら肌が傷ついてしまいそうだった。そこへジェラルドの手が重なる。彼女の手をつかみんで握りこぶしを開かせ引き寄せる。

「はぁっ、ぁ、アアッ……!!」

 最奥を穿ったその一突きはとても重かった。ドクドクと体のナカが脈を打ち、甘く気だるい痺れが肢体の先端にまで駆け巡る。

「っ、は……ぁ、はぁっ」

 絶え絶えに息をしていると、急に体が宙に浮いた。ジェラルドはエリスを横向きに抱え上げて診察台へ運ぶ。
 一度で終わることなどありえない。彼の強すぎる肉欲には辟易するが、体をならされてしまっているのでそう簡単には疲れない。われながらあきれる。
 診察台の上に仰向けに寝かされ、看護服の前をさらに大きく乱される。先ほどよりもいっそう開け広げになった胸を隠す前にジェラルドに悪言を吐かれる。

「そうして寝そべるとますます真っ平らだな」

 エリスはカッと目を見ひらいた。体は性的な行為に従順だが、心まではそうはいかない。憎まれ口にはまったくもって慣れはしない。
 サッと両腕で胸もとを隠す。

「難なく腕で覆い隠すことができるな、そのサイズだと」

 ああ、なにをしても馬鹿にされる。なにか言い返してやりたいが、なにも言葉が浮かんでこない。
 ジェラルドはエリスに馬乗りになり、彼女の腕をつかんで無理やり乳房をあらわにした。

「ん、んっ……!」

 乳頭に舌を這わせられ、いつも嫌というほど馬鹿にされているのになぜ心地よいと感じてしまうのだろう。

「ふ、ぅっ」

 どれだけ罵倒されても、気持ちよくなって喘いでいる自分が心底情けない。

「ぅっ、う……ッ」

 エリスは目を閉ざして顔をそむけた。そうして、意図せずあふれ出た涙をひた隠したのだった。

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posted by 熊野まゆ at 09:06| 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま《完結》


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