2017年01月04日

伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第一章16


「ん、んーっ!」

 構いなしにうめき、ドンドンッと力いっぱいジェラルドの胸を叩く。すると彼は不愉快そうに眉根を寄せてエリスの両手首をつかみ、ベッドに張り付けた。
 両手を押さえつけられ、膝の上には相変わらずジェラルドが乗っている。口すらも自由に動かせない。エリスはなす術なく完全に組み敷かれてしまった。
 唯一抗っているとすれば目と心だ。彼のいいようにされてたまるか、と踏ん張り必死ににらみつける。
 それでもジェラルドはエリスの唇を貪るのをやめない。上唇を食んで吸い付き、彼女の意思を汲みもせず舌を挿し入れる。

「ンンッ!?」

 いきなり入り込んできた生温かいものに歯列をたどられ、そのむずがゆい感覚は妙だとしか言いようがない。
 頭を左右に振れば彼の舌から逃れられるだろうかと試みたものの、口にしっかりとはまり込んだ舌はそれくらいでは抜けなかった。

「――!」

 エリスは心の中で悲鳴を上げる。看護服の上から胸をわしづかみにされた。口を塞がれているので大声を出すことはできない。
 ジェラルドはエリスの小さなふくらみを服の上からぐにゃぐにゃと揉みしだいたあと、襟のすぐ下のボタンを外し始めた。

「むっ、ん」

 今度はエリスがジェラルドの手首をつかむ番だ。服を脱がされまいとしてそうしたものの、彼の手を止めることはできない。看護服とシュミーズの前を開かれて胸もとをたやすくあらわにされてしまう。
 胸がさらけ出ると、舌の動きはますます活発になった。エリスの舌に自身のそれを絡め合わせながらジェラルドはむき出しの薄桃色を二つとも指先で小突く。押してなぶるという動作は舌と指で連動している。

(い、いやっ……!)

 明確にそう思ったのは、屈服しそうになったからだ。彼の舌と指にまさぐられることを気持ちがいいものだと体が認識しようとしている。
 制されてはいけない。その一心でできうる限りの抵抗を両手を使って示す。胸だけでも隠そうとしたが、圧倒的に大きな手指にあっさりと払われた。

「――最後の月のものはいつだった?」

 急に口が自由になったその刹那に訊かれ、面食らう。

「ど、どうしてそんなことを聞くんですか」
「いいから答えろ。痛くするぞ」
「ぃっ……!」

 乳頭は彼の指に捕らわれたままだった。ぎゅっと強くつままれ、ほとばしったその感覚にエリスは眉根を寄せる。素直に答えたくはないけれど、ここで意地を張ったら事態はよけいに悪化するとこのときは思った。

「先月の……いま、ごろ」

 か細い声でエリスが申告すると、ジェラルドは口の端を上げた。整った顔に傲慢さのにじんだほほえみを浮かべてエリスの胸へ近づいていく。

「……っ、あの? なに、を」

 いままでは胸を指でいじられたり彼のものを咥えさせられるだけだった。しかし今日は違う。先ほどの返答がどう作用しているのかわからないが、これだけは明白だった。ジェラルドいままで以上のことをするつもりなのだ。
 彼が薄桃色の先端を口に含もうとしているのがわかってエリスはゾクッと瞬時に総毛立った。

「やっ……!」

 身をよじるものの彼の舌からは到底逃れられない。ツツ、と舌先が乳頭に触れると、細胞の一つ一つが粟立って震えを起こしたような衝撃が心身に湧き起こった。嫌だと思うのに、それとは違う感覚が体のどこかに確かに存在している。

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posted by 熊野まゆ at 05:43| 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま《完結》

2017年01月05日

伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第一章17


 怖くて怖くてたまらない。彼の舌がより広く胸のいただきに触れたらいったいどうなってしまうのだろう。嫌だと思う心が、別のなにかに押し流されて――あるいは塗り潰されてしまうような気がしてならない。

「そう怖がるな。素直に答えたんだから痛くはしない。……もうしばらくは」

 違う。痛みを恐れているのではない。快楽という名の泥沼へ、意に反して彼に突き堕とされて抜け出せなくなるのが怖い。彼の役に立ちたいとは常日頃思っているが、ここで快楽を覚え込ませられてはたんに自分が堕落してしまうだけだ。
 彼に奉仕をするのは百歩譲ってよしとする。しかし快楽を教え込まれてしまったら、依存してしまいそうで空恐ろしくなる。
 ジェラルドはただの主人《あるじ》。恋人や夫の類ではないから、彼に固執しては決してならない。彼のモノを咥えたりしている時点で手遅れかもしれないが、本音としてはまっとうな主従の関係を貫きたい。
 エリスは彼の舌を意識しないよう努めた。なにも感じてはならないのだと自分に言い聞かせる。
 天井の隅に視線を投げるエリスをジロリと上目遣いでにらみ、ジェラルドは彼女の双乳を舌と指でそれぞれ触れる。

「……っ」

 生温かな舌が薄桃色の屹立を根もとからねっとりと舐め上げた。声を抑えるので精いっぱいのところに、もう片方の乳頭を指の腹でこすり合わされ、下半身を中心に心地のよい痺れが生まれた。
(だ、だめ……なにか別のことを考えなくちゃ)
 しかしながらどれだけそう思ってもまったく気が逸れなかった。考え事が思いつかない。

「……んっ!」

 つい下を見てしまった。ちょうどジェラルドが口を大きく開けて乳頭を食んだところだった。
 ぴちゃぴちゃと盛大に水音を立てて舐めしゃぶられては否が応でも彼の舌を意識してしまう。吸い上げる力は強大で、乳首をもぎ取られてしまうのではと危ぶまずにはいられない。

「やめ、て……くださいっ」

 どれだけ口でそう言ったところで無駄なのはわかっている。それでも、屈する気はないのだと意思表示をすることは大事だ。逃げるのはやめにして、次は徹底抗戦だ。

「……感じないふりはやめにするのか?」
「なっ……! ふりじゃありません。全然、気持ちよくなんかない」
「へえ……」

 ジェラルドの片手が急降下する。

「――っ!?」

 スカートの裾をめくり上げ、素早くドロワーズの中に侵入した。

「じゃあこれは何だ?」

 エリスは驚きでなにも言葉を発することができなかった。彼の指が下半身の秘めやかなところにうずまっている。指先がわずかに動き、ぬちゅっと水っぽい音がした。
「あれだけ医学書を読んでいるんだ。知識はあるんだろ? 快感を得ればここが蜜をこぼすという知識は」
 ジェラルドはゴソゴソと手探りでエリスの愛蜜をかき出し指に絡める。

「よく濡れている。たったこれだけの愛撫で」

 唾液に濡れ硬くしこったままの乳頭を指でコリコリと押しなぶりながらジェラルドは嗤う。

「きみの本質は存外、淫猥のようだ」

 後頭部を鈍器で殴られたような衝撃があった。無論、本当にそうされたわけではない。しかし精神的にはそれくらいのショックを受けた。

(そんな……私……っ)

 認めたくないけれど、他のひとがどうなのかわからないから比べようがない。

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posted by 熊野まゆ at 06:50| 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま《完結》

2017年01月06日

伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第一章18


(ご主人様は経験豊富そうだけど……。ううん、だからわかるの?)

 医者と領主を兼業して多忙になる前は浮名を流していたものだと先輩のメイドに聞いたことがある。

「わ、私は……そんな……」

 いや、きっとジェラルドの舌遣いが巧みなのだ。そう反論しようとして、しかし褒めるようなことを言っては増長してしまうやもと考えて口には出さなかった。

「俺が言ったことをきみが認めようが認めまいが、こうしてあふれ出ているというのはまぎれもない事実だ。見てみるか? ほら」

 身の内から異物感がなくなる。ジェラルドは蜜壷から指を引き抜き、まざまざとエリスに見せつけた。彼の中指はてらてらと光っている。それを目にしたとたん、揺るぎようのない現実を突きつけられたようで愕然とした。つい目を逸らしてしまう。
 なにかと口ごたえしてくるメイドを丸め込んで優位に立っているのが嬉しいのかジェラルドはニイッと笑みを深め、ずるりといっきに彼女のドロワーズを引き下ろした。

「やっ! な、なにするんですか」
「邪魔だから脱がせたんだ」

 そう言いながらジェラルドはドロワーズを足先から抜けさせた。
 なんという恰好だろう。看護服は一応はまだ身につけているものの、胸は開け広げだしスカートの中はすぐに素肌だ。
 スカートの裾だけでも脚を覆っていればと思い両手を伸ばすものの、それよりも先にジェラルドが裾をつかんでバサリとめくり上げた。
 視線の先には自身の陰毛。そしてジェラルド。瞬時にかあっと頬が熱くなった。
 エリスは言葉もなくふるふるとかぶりを振る。そんな彼女の膝をジェラルドはつかんで無理に押し上げ、蜜に濡れた秘所へ顔を近づけた。頬の熱は上がるばかりだ。

「な、なにが楽しいんですかっ!?」

 秘められるべきそこをそんなにも近くで見つめて、いったいなにが楽しいのだろう。

「大いに楽しい。ふだんはああ言えばこう言うきみがうろたえているのが」
「――なっ!」

 何て意地の悪い男なのだ。エリスはわなわなと唇を震わせた。なにか言ってやりたいが、思いつかない。こちらばかり精神をえぐられていて悔しい。仕返しをしたいのに、論戦も体力も遥かに劣っている。両脚をつかんでいる彼の手はびくともしない。
 エリスは唇を噛んだ。泣くのを我慢しているような顔だ。ジェラルドは笑みを消し、言葉はなく口だけを開ける。中から出てきた舌が、彼の眼前にあった肉粒に触れた。

「ひっ……!」

 全神経が急速にそこへ集まっていくようだった。それはさながら目を閉じたいのに強引に開かされているようで、無理やり下半身を意識させられる。熱い舌に触れられた淫核は過敏にヒクつき、怒ったように真っ赤になってふくらむ。怒らせて愉しむのが彼の嗜好らしく、ジェラルドは肉粒がそんな状態になったのを喜び口もとをほころばせてさらに舌でそこをたきつけた。

「ぁ、あっ!」

 一突きされるたびにビリビリと痺れが走る。それは苦痛を伴うものとはかけ離れていて、それゆえによけいに焦燥感が募る。

(だめ……、だめっ)

 快楽に溺れてはいけない。エリスは頑なに志を貫こうとする。しかしジェラルドはなおも揺さぶりをかけてくる。ぷっくりとふくらんだ快楽の源を舌で左右にくすぐり、そうかと思うと上下の動きも加えて激しく舐めまわした。

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posted by 熊野まゆ at 06:50| 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま《完結》

2017年01月07日

伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第一章19


「ぁ、は……っぁ、あっ!」

 甘い声が出るのを自制できない。エリスは両手で自身の口を覆った。しかしやはり嬌声は抑えきれず、くぐもったものに変わるだけだった。

「ぅ、う……っ! ん、んんっ」

 嗚咽のような喘ぎ声はジェラルドの情欲をいっそうたぎらせる。彼の舌遣いが激しさを増し、手付かずだった肉壷をまさぐる一助になる。ジェラルドは花芽に舌を這わせたままゆっくりと中指を隘路に沈み込ませた。

「――っっ!!」

 先ほどの比ではなかった。蜜の存在を指し示されたときよりも深く指が侵入していく。ぐぷっ、ぐちゅっという水音が立つのはジェラルドの指がたまに入り口へ戻ろうとするからだ。半歩引いては二歩進む。それを繰り返す。そうして指はじわりじわりと狭道の行き止まりを目指す。

「ぁ、あっ――!」

 おそらく最奥を指が突いた。なにもかもをえぐられている、そんな心地になった。彼の指が体の中に沈んでいる精神的なショックと、異物がそこに確かにあるという肉体的な違和感に襲われる。そしてなによりも、彼の指が不快とは対極にあるという事実に打ちのめされた。

(違う……! そんな、こと)

 頭の中で否定し続けるエリスを嘲笑うがごとくジェラルドは舌と指をうごめかせて彼女を快楽の高みへ誘《いざな》う。

「ん、ンンッ、ぁふっ」

 指の抽送がいっそう小刻みになった。舌も指もいやに素早い。下半身を核に頭のてっぺんにまで昇りつめてくるものの正体は何なのだろう。追い立てられているか、あるいは押さえつけられているような激情が全身にひた走る。
 なにかが来る、と思った刹那、体の中が激しく鼓動した。
 なにがどうなったのかわからず、エリスは息を切らせて疑問符を浮かべる。わけがわからないといった様子の彼女をジェラルドは診察をするときのように冷静に眺め、肉壷の中に沈めていた指を四方に動かして最終確認をする。

「かなりほぐれているからそう痛くはないと思うが……とにかく力を抜け」
「な……に、を」

 彼が身につけている濃紺のナイトガウンは下肢がはだけていた。硬く張り詰めた雄物が垣間見えている。
 性交の仕方は知っている。しかしできるわけがない。それを彼とする理由が少しも見当たらない。なによりも、怖い。

「イヤ……! やめて」

 エリスは仰向けに寝転んだまま両腕をずるずると動かしてジェラルドから逃れようとする。

「だがきみの体は俺のモノが欲しそうだ。ほら……早く寄越せとヨダレを垂らしている」

 ジェラルドはエリスの秘所の浅いところで指を折り曲げ中の蜜をかき出した。

「……ッ!」

 彼の指摘通りだった。蜜は惜しみなく外へこぼれ落ちる。
 羞恥と背徳感、それから自身への失望がないまぜになり、いよいよ涙が出そうになった。そこへ、彼が入り込んでくる。
 エリスの両脚をつかんで押し上げたジェラルドは猛り狂った一物を彼女の蜜口にあてがい、こなれたふうに挿し入れていく。

「や――……っ!!」

 脚に添うジェラルドの手をつかんで引き剥がそうとした。しかしまったく動かない。下半身の圧迫感は秒を刻むごとに凄まじさを増す。
 エリスの顔が悲痛に歪んだ。一線を越えた瞬間だった。
 彼女の目からとめどなく伝い落ちる涙をジェラルドが無言で拭う。
 指で涙を拭かれたのには驚いた。無理やりこんなことをしておいて、いたわるようなことをしないで欲しい。

「……すべて、収まった」

 彼の声が他人事のように響く。
 呆然としていたのはどれくらいの時間なのだろう。
 体内のソレが、動き出す。

「あ、ふっ……!」

 体の痛みは薄れていた。それでも、心は依然としてズキズキと痛む。その痛みの中心へジェラルドは律動しながら唇を寄せ、きつく吸い上げた。今度は胸がチクリと痛んだ。

(これきり、よ……。次はない。次があってはならない。こんなこと――)

 しかしエリスの意に反して、このふしだらな関係はその後二年は続くことになる。

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posted by 熊野まゆ at 07:41| 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま《完結》

2017年01月08日

伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第二章01


 未明に使用人宿舎へ戻ったエリスは倒れ込むように自室のベッドに突っ伏した。
 休診日はエリスにとっても休日だが、どこかへ出かける気にはなれずほとんど寝て過ごす。というのも、休前日は決まってジェラルドに一晩中、彼の旺盛すぎる肉欲に付き合わされるので心身ともにヘトヘトなのだ。
 それでなくても通常業務だけで手一杯だ。人員を増やしてはどうかと提案したこともある。しかし他所者は信用ならないとか何とか言って却下された。

(彼は私のことをどう思ってるの)

 じつは何度かそれを尋ねてみたことがある。けれど、いつもはぐらかされてうやむやになるのだ。
 こんなことを続けていたら結婚なんてできない。このシュバルツ国における女性の結婚適齢期である20歳を迎え、同期のメイドたちは次々と婚姻を決めて職を辞していくというのに。

(どうにかしなくちゃ……。このままじゃ、いけない)

 重く垂れ下がってくるまぶたに抗いはせず、エリスはそのまま目を閉じて眠りに落ちた。


 昼過ぎまで惰眠を貪ったあとは部屋の片付けや洗濯に追われた。夕方、自室の書物机で自分宛ての手紙を確認する。

(……また、きた)

 差出人が書かれていない、異様なまでに真っ赤な封筒はもはやお馴染みだ。どうせろくなことが書かれていないと思うが、一応は封を開けて中身を確認する。

『おまえに生きる価値はない』

 赤い紙の中央になにかの書物を切り刻んで文字が貼り付けられている。いつものことだ。文言は違えど毎度毎度こうだから、ご苦労なことだと思う。
 この悪質な手紙はもう一年以上続いている。一月に一通は必ず届く。エリスは手紙をビリビリと破り捨ててゴミ箱に捨てた。初めのうちはいざというときの証拠になるかも、と考えて保管していたが、こうも定期的に届いては増える一方で、まして不愉快な内容なわけだから引き出しにしまっておくのも馬鹿らしくなった。そういうわけで、赤い手紙は腹いせにビリビリと盛大に破いて即刻処分し、無きものにしている。
 エリスはゆっくりと長く息を吐いて窓の外を見た。まもなく、陽が沈む。


 休日明けの仕事というのはそれだけで憂鬱だ。くわえて、週の初めに必ずやって来る患者のことを思うといっそう気が重くなる――。

「はぃ、そぅなんですぅ。頭が痛くってぇ……」

 週初めの診察室。エリスによく似た亜麻色の髪の女性がジェラルドに向かって甲高い猫なで声を出していた。
 女性の名はコレット。この診察室へやって来る他の患者よりも豪奢なドレスを身にまとっていつもやって来る。おそらく彼女は貴族令嬢だ。自邸に医者を呼びつけずわざわざ通ってくるのは、十中八九ジェラルドが目的だろう。

「では頭痛薬を出しておきます。お大事に」

 コレットには目も向けずジェラルドは淡々とそう言った。彼はどの患者にも愛想はよくない。しかしコレットに対してはことさら無愛想なように見受けられる。ジェラルドも、彼女が仮病を使っていると考えているからかもしれない。

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posted by 熊野まゆ at 07:21| 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま《完結》


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