2018年06月15日

青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 序章03


 両親が他界し侯爵領を継いでからもルイスはカタリーナをブレヴェッドの邸に置いていた。
 ボードマン男爵はあれから五年をかけて事業を立て直したが、亡き両親はカタリーナを彼らのもとに返さなかった。ルイスもまた、カタリーナを手放したくなかった。男爵家の事業はまたいつ傾くかわからない。そうなればまた、カタリーナを放り出されかねない。あるいは、政略結婚の駒にされてしまうのではないかと思った。
 カタリーナが社交界デビューして以来、しおらしく可憐な彼女には毎日のように複数の縁談が舞い込んでくるものの、ルイスは相手を確かめもせず片っ端から断っている。

(カタリーナに結婚なんて……まだ早い)

 はじめのころはそう言って縁談を断っていたが、それからもう三年だ。最近は縁談を断る理由づくりに四苦八苦している。
 カタリーナを貶めるような理由はつけたくない。彼女に欠点などひとつもないからだ。
 むしろ、義妹を溺愛しすぎている自分こそが彼女の唯一の弱みになっているのかもしれない。
 一日の執務を終えたルイスはベッド端に腰掛け、大きなため息をついた。

(もし僕が彼女に求婚したら……カタリーナはどう思う?)

 彼女にとって自分はかけがえのない兄には違いないだろう。ただ、カタリーナがそれ以上の関係を望んでいるのかどうか、まったくわからないのだ。
 コン、コンッと控えめに寝室の扉がノックされる。ルイスはすぐに「どうぞ」と入室をうながした。
 木製の茶色い扉からひょっこり顔を出したのはカタリーナだ。
 カタリーナが十八歳になったいまもなお、ルイスは彼女と寝室をともにしている。
 カタリーナは毎晩、枕を持ってこの部屋へやってくる。トコトコと歩いて部屋のなかへ入ってくるようすは幼いころからなんら変わらない。
 艶のある茶色い長い髪にヘーゼルナッツを思わせる愛らしい瞳も昔から彼女が持ち合わせているものだ。
 ただ、ここ数年で胸のふくらみが一段と大きくなった。腰はくびれ、全体的に丸みを帯びた、いかにも女性らしい体つきになった。

「……おいで」

 ルイスはベッドの上に肩肘をついて頭を支え、カタリーナを手招きする。
 カタリーナは嬉しそうに「はい」と返事をしてベッドに上がり込んでくる。
 同じベッドで寝るからといって隙間なくピタリと寄り添う必要はないのだが、もう十年以上こうして密着して眠っているのでそれが当たり前のようになっている。
 ルイスはカタリーナの腰に腕をまわしてぎゅっと抱き寄せた。彼女はそれを少しも嫌がらない。

(……また、大きくなった……?)

 たとえネグリジェを着ていても、カタリーナの乳房は豊満なのがよくわかる。彼女のふくらみはいつも胸板に当たる。

「おにいさま、おやすみのキスは?」

 その言葉も、もはや習慣のようなものだ。
 ルイスは「ああ」と答えてカタリーナのあごに手を添えて頬に触れるだけのキスをする。
 すると彼女がにっこりと極上の笑みを浮かべるものだから、愛しさが腹の底から込み上げてきて、唇にも触れたいのを必死にこらえることになる。

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2018年06月10日

青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 序章02



「こっちが朝みんなで集まった食堂。それからその向こうはサロンで――」

 ルイスはカタリーナを連れて歩きながら次々と部屋を案内した。

「は、はい……」

 カナリーナはというと、どうやら戸惑っているようだった。
 ルイスは心のなかで「ああ、そうか」と言う。

「カタリーナが邸の間取りを覚えられるまで、毎日案内してあげる」
「……! ありがとうございます――ルイス、さま」

 ――ルイスさま。
 その呼び方はどうしてかしっくりこない。

「おにいさま、と呼んでごらん」
「はい、おにいさま」

 彼女にはまだ笑顔がないが、硬い表情は幾分かほぐれたような気がする。
 ルイスは穏やかにほほえみ、彼女と連れ立って邸のなかを歩いた。


 来る日も来る日も、ルイスはカタリーナの部屋を訪ねた。
 話をしながら邸内を歩いていると、少しだが笑顔も見られるようになってきた。
 カタリーナは一週間も経たぬうちに広大な侯爵邸の間取りを覚えてしまった。頭のよい子だ。

「明日からは僕の案内は不要だね。邸の外へ行くのはだめだけれど、邸内だったらどの部屋へでも行っていいから」
「……はい」

 彼女の表情が晴れないのがいささか気になったが、ルイスはその日の午後からエコノミーに関するレッスンを予定していたため、足早にカタリーナのもとを去った。
 その日の夜。レッスンを終えたルイスはカタリーナのことが気になり、彼女の部屋へようすを見に行った。

(もう眠っているだろうか)

 そう思いながらもカタリーナの部屋の扉をノックする。
 なかから返事はなかった。かわりに、すすり泣くような声がかすかに漏れ聞こえた。

「……カタリーナ? 僕だ。入るよ」

 そっとドアノブをまわしてなかへ入る。部屋のなかは薄暗かった。
 目を凝らすと、カタリーナがベッド端に座っているのがわかった。
 「ぅ、ぅっ……」と小さな嗚咽を漏らしてカタリーナが泣いている。

「……眠れないの?」

 カタリーナはこくっと一回だけうなずいた。

「一緒に寝てあげようか」

 すると今度は、何度もこくこくとうなずいた。

(懸命に頭を振って……かわいい)

 ルイスは顔をほころばせ、カタリーナとともに彼女のベッドへ潜り込む。
 細い腰に腕をまわして抱き寄せると、彼女の温かさが伝わってきた。

(妹って……こんなにかわいいものなんだな)

 七つも年下の、自分よりも格段に小さな存在。
 温かくやわらかで従順な彼女を、純粋に愛おしく思った。
 その感情が不埒なものに変化したのは、いつからだろう――。

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2018年06月09日

青年侯爵は今日も義妹をかわいがる 序章01


 ――僕が抱く劣情をきみは少しも知らない。


 ブレヴェッド侯爵家にやってきたころの彼女――カタリーナ・ボードマンはあまり笑わない五歳の子どもだった。
 彼女の家のことを考えれば笑顔がないのもうなずける。
 カタリーナはボードマン男爵家の四女だった。あるとき、男爵家の営む事業が頓挫し、使用人はおろか四人の娘たちすら養えなくなるほど家計が逼迫した。
 そこで、ボードマン男爵と以前から親交のあったブレヴェッド侯爵が男爵の幼い四女を引き取って養うことになった。初老の侯爵夫妻はもともと娘を欲していた。
 しかし、カタリーナにしてみれば突然、両親や姉と引き離されて、見も知らぬ侯爵家で過ごすことになったのだ。
 当時十二歳だったルイス・ブレヴェッドは、そうしてできた妹に対してどう接すればよいのか、彼女の身になってよく考えた。



「おはよう、カタリーナ」

 食堂でテーブルを囲み、両親や弟――今年で七歳になるテッド――が口々にカタリーナに「おはよう」と語りかけた。そのなかで十二歳のルイスだけはなにも言わず、カタリーナのようすをうかがった。
 しばしの間があって、カタリーナは小さな声で「おはようございます」と言葉を返した。その表情はとても硬い。

「カタリーナの好きな食べ物はなんだい?」
「カタリーナはよく食べるほう?」
「ねえ、カタリーナ! あとでいっしょにあそばない?」

 両親と弟はほとんど同時に、カタリーナに向かってそう尋ねた。
 カタリーナはなにから答えればよいのかわからないようだ。「あの、ええと」と言いながら表情を曇らせる。

「カタリーナはまだこの邸にきて間もないんだ。まだ心の整理がついていないよ。彼女が自分から話したくなるまで……自分から、遊びたくなるまで待ったほうがいい」

 静かな声音でルイスが言うと、両親と弟は「そうだな」、「そうね」、「わかった!」とそれぞれ答えて食事をはじめた。
 ルイスはふたたび、向かいに座る彼女に視線を据える。カタリーナはなにを言うでもなく、ルイスを見つめ返した。


 カタリーナがブレヴェッド侯爵邸にやってきた日の昼下がり。
 ルイスは彼女に邸内を案内することにした。
 そういったことはメイドに任せてもよいのだが、朝食の席で見た彼女の硬い表情がどうも頭から離れず気がかりだったので、そうすることにした。
 カタリーナがあてがわれている部屋の扉をノックすると、なかからメイドが出てきた。

「カタリーナに邸内を案内する。きみはほかの仕事をしていい」
「かしこまりました」

 メイドが頭を下げて部屋を出て行くと、なかからゆっくりとした足取りでカタリーナがやってきた。

「なにをするにも、どこへ行くにもメイドがついてくるのではうっとうしいときもあるだろう。邸のなかを案内するから、きみの思うまま出歩くといい」

 五歳の子どもにこんな説明をするのはいけなかっただろうかと思ったが、カタリーナは言われたことをきちんと理解したらしく「ありがとうございます」と言ってうなずいた。

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2018年06月08日

双鬼と紅の戯曲 終章03【完】



 奥まったところをズン、ズンッと何度もつつかれる。

「ひぁ、あっ……! ん、はぅっ」

 脳天にまで響く勢いで突かれているが、前へ倒れてしまわないのは乳房ごと体をつかまれ支えられているからだ。
 極夜の大きな手のひらが乳房を下から持ち上げるようにしてたぷたぷと揺らし、腰を打ちつけてくる。
 円を描いて内側をかきまわされる。ぐちゅ、ぬちゅっとひときわ大きな水音が立った。

「は、ん……っ、だめ……あ、あぁ……!」
「もう、だめなのか? 俺はまだ足りない……」

 極夜は隘路のはじめから終わりまでをゆっくりと時間をかけて陰茎で往復する。そうして愉しみを引きのばす。
 しかしこちらとしてはたまらない。

「やっ……! 極夜さま……あ、んん……っ」

 肉襞をこする雄棒は硬く太く、いつだって存在感がありすぎる。それなのにじれったい動きをされると、高みへと昇っている途中で待ったをかけられている心地になり、じつにもどかしい。

「鈴音は、これが好きだろう? うしろから突かれながら乳房と豆粒をいじられるのが」
「ひゃっ!! あ、あぁあッ」

 極夜の左手が乳頭を押し上げ、右手が下半身の珠玉をギュッとつまむ。

「あぁっ、それ……やぅ、ん……!」

 鈴音が首を横に振っても、体は悦びをあらわに秘所を尖らせて快感を訴える。

「ほら、こんなに硬くして……」

 うっとりとしたようすでそう言って、極夜は鈴音の肩に浅く牙を当てて血を吸う。そのあいだも律動はやまない。肉棒を緩慢に前後させ、鈴音をよがらせる。

「んん、ふぅっ……」

 ゆるやかな動きにじれったさを感じるようになってきた。それは彼も同じなのか、しだいに抽送が速さを増す。
 そうして最後には全身がガクガクと大きく揺れるほどになり、喘ぎ声が止まらなくなる。

「あぁあ、あ――……!!」

 鈴音が泣き叫ぶような嬌声を上げると、極夜の一物はドクドクと打ち震えて鈴音のなかに精をばらまいた。
 極夜が鈴音の背に覆いかぶさる。彼を支えきれず、鈴音は畳の上に突っ伏した。
 ふたりとも呼吸が荒い。重なりあう体もそうだが、すべてがまざりあってしまいそうだった。
 ちゅ、と柔らかい唇が頬に触れる。極夜は何度も頬に口づけてくる。
 ゆっくりと顔を横に向けると、唇同士が重なった。
 ずいぶんと長いこと唇を合わせていた。
 ろうそくの薄明かりに照らされた彼の顔はとても穏やかだった。
 瞳がしだいに紅を帯びてくる。彼の情欲にふたたび火がつくのを感じて、鈴音もまた彼の瞳と同じ色に染まった。

おわり

お読みいただきありがとうございました!
熊野まゆ

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posted by 熊野まゆ at 07:22| 双鬼と紅の戯曲《完結》

2018年06月03日

双鬼と紅の戯曲 終章02



「すみずみまで……おまえに無断で、いじくりまわしていた。すまない」
「そっ……そう、なのですか」

 もしや、ときどき夢に見ていた淫戯は現実だったのでは――と思ったが、いまさらだ。いまさら気にしたところで、仕方がない。過ぎたことだ。

「愛している、鈴音」

 とびきり甘い声音でそうささやかれるものだから、快感が幸福感をともなって体と心に広がっていく。

「ん――」

 愛する人に体をまさぐられていたのだ。不快感はない。ただ、「すみずみまで」というのが恥ずかしいだけ。
 高まる気持ちとともに彼の手の動きも激しくなる。ひとりでに尖りきったいただきを複数の指がなぶりだす。

「ぁん、んっ……ふ、あぁ……!」

 胸の先をそんなふうにめちゃくちゃにされて恥ずかしいと思う反面、愛撫されるたびにそういった羞恥心が抜けていくので不思議だ。いや、気にならなくなるというほうがきっと正しい。彼の指戯に溺れている。
 極夜の指先は乳頭をなぶるのをやめ、今度はすりつぶすようにこねはじめた。まるで手遊びだ。
 そうして遊ばれていても、気持ちいいのには違いない。

「ひぁ、んっ……!」

 高い声を出すのにもすっかり慣れてしまった。口から自然と嬌声がこぼれでる。同時に、脚の付け根がムズムズしてくるのもおなじみだ。
 極夜は鈴音がもどかしそうにしているのを見て、すかさずそこへ右手を向かわせた。
 真っ白な着物の裾を何枚もかきわけて、秘された小さな口を手探りする。

「ああ、ほら……もうこんなに濡らして」

 隘路の浅いところに溜まっていた蜜を指で外へとかきだされる。

「んんっ、ゃっ……あ、あぁっ」

 はじめてそこを指でまさぐられたときはあせりやおそれがあったけれど、いまは腰を揺らして悦ぶばかりだ。
 極夜は鈴音の蜜洞の最奥まで指を挿し入れて、湿り具合を確認したあとで「すぐにでも入りそうだ」とつぶやいた。
 その言葉にますます官能を刺激されて鈴音は身もだえする。

「ほしいか?」

 問われ、すぐにでも首を縦に振りそうになったが、はしたないという思いが待ったをかけて返事をためらわせる。

「ふっ……ぅ、んぅ」

 鈴音が返事をせずとも極夜は彼女の着物をめくり上げて、つながる準備をする。
 準備万端になったところでふたたび尋ねられた。いや、決めつけられた。

「次から次に蜜があふれてくる。口で言わずとも、体がほしがっている」
「ん、あぁ……ッ!」

 腰を引かれ、うしろから硬直で貫かれる。
 もうそれ以上はいけないというところまでいっきにやってきたが、濡れすぎた狭道は快感しか生まない。

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posted by 熊野まゆ at 06:51| 双鬼と紅の戯曲《完結》


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