2017年05月20日

秘されし、その甘やかな救済 第二章10


 彼の片手がネグリジェの上をゆるりゆるりと伝い落ちていく。

「……っ」

 マティアスの指がネグリジェ越しに肌を押す。その感覚は何ともむずがゆい。
 くすぐったそうにしているラティーシャを見下ろし、マティアスは指先をさらに下降させてふくらみにのぼらせた。

「ぁ……」

 酒に酔っているせいかいまは判断力を欠いている。ふくらんだ部分に触れられることよいのか悪いのか、わからない。
 マティアスの指は慎重にネグリジェの上を滑り、ふくらみの中央にたどり着いた。

「じつはさっき……ここが透けていたんだ」
「……っ!!」

 ネグリジェの生地ごしにマティアスは尖りの部分をコリコリと押す。彼がそうして指でこねると、ネグリジェとシュミーズの向こう側にある乳首がつんっといっそう硬く尖った。

「ああ……俺の指に反応してくれたな。律儀に勃ち上がって……じつに健気だ」
「! ……な、っ」

 よくわからないが、羞恥心を煽るようなことをマティアスは言っている。ラティーシャの頬が酒のせいだけではない火照りを宿す。
 色味を増したラティーシャの赤い顔をしげしげと眺めながらマティアスは彼女のふくらみの先端をふたつとも指でノックした。

「……っ、ん、んん」

 ふくらみに指を押し込め、弾き返そうとしてくる乳頭をくにくにともてあそぶ。
 マティアスは深く息を吐いた。

「きみの薄桃色をよく見てみたい。じかに、この目で」

 ラティーシャは言葉もなく驚く。

(そ、それって……)

 よく考えずとも彼が言いたいことはわかる。それは、ネグリジェとシュミーズを脱ぐということ。

「そ、そんな……こと」

 できません、と言うつもりだった。しかし性急に唇を塞がれてしまい、言葉が発せない。

「ンンッ、ふ……!」

 ――巫女になることだけが私の救い。
 神は人のように人を裏切らない。神だけを信じていれば救われる。
 それがいま大きく揺らいでいる。情熱的な口付けをほどこしてくるこの男性《ひと》は、もしかしたら信じ合える存在なのではないかと思い始めている。

(確証なんてないのに)

 神は絶対だが人は不確かだ。自分を含めて不確かな生き物だ。現に、巫女になれれば満足だと思っていたはずの自分はいま、マティアスにされるがままになっている。彼の唇は柔らかくて、熱くて――気持ちがいい。もっと触れ合ってみたい、という好奇心が身の内からあふれ出してくる。

「……すまない、なにか言いかけていたな? なんだ」

 ほんの少しだけ唇を離し、マティアスは何食わぬ顔で訊いてくる。

「あ……の、っ――ん!」

 言葉までも塞ぐキスだ。はなから彼はラティーシャに有無を言わせる気がない。

「んん、っ……!」

 マティアスの両手がふくらみをわしづかみにしてぐにゃぐにゃと激しく揉みしだく。純白のネグリジェがしわくちゃになった。
 いろんな想いを抱えていたはずなのに、頭の中が真っ白になった。あるのは、乳房をもてあそぶマティアスの手の感覚だけ。そのこと以外は――ほかのことは、なにも考えられない。

前 へ l 目 次 l 次 へ


2017年05月13日

秘されし、その甘やかな救済 第二章09


 なにもかもがふわふわとしていて、すべてが夢見心地だった。

「出会って間もない俺の言うことなんて、信じられないか?」

 ラティーシャはふるふると首を横に振る。

「信じて、います……」
「それは……俺の妻になってくれるのだと曲解してしまうな」
「いえ……それは……まだ……」

 マティアスのことを信頼はしているが、自分自身が彼を愛することができるのか自信がない。

(どれだけ厭わしくても……私はあの父の子だもの、血は争えない。私も……元来は父のように浮気性かもしれない――)

 そう思うと、ひどく心が痛んだ。だから、だれとも結婚したくないのだ。傷つきたくない。傷つけたくない。なにもなければ、だれも傷つかない――。

「独り、というのは虚しいものだよ、ラティーシャ」

 うつむいていたラティーシャが顔を上げる。

「万人がそうだとは言わない。だが少なくとも俺はそうだし、ラティーシャも同じだと俺は思う」

 碧い瞳に射抜かれる。本当にそうなのではないかと思えてくる。

「先に触れ合ってみないか? そうすれば互いのことがよくわかる」
「触れ、合う……?」

 頬を赤く上気させたラティーシャをマティアスはじいっと見つめ、その視線を少しも外さない。

「俺はもっと触れたい。きみの、いろんな箇所に。触れて……知りたい。きみのすべてを」

 マティアスは手にしていたラティーシャの長い銀髪先をスルスルと手繰り寄せて、それ以上は手もとに引き寄せられなくなると今度は彼自身の手を髪の根のほうまで移動させた。その手でそっと頬に触れる。

「嫌なら振り払ってくれ。あの男にしたように、思いきり」

 触れるか触れないかの位置にあったマティアスの手が、しっかりとラティーシャの頬とあごをつかむ。
 体に力が入らない。両手はピクリとわずかなら動くものの、意思を持って彼を振り払おうとはしない。
 ――お酒のせい?
 レイヴンに迫られたときも、心臓がうるさかった。いまだって高鳴っているけれど、レイヴンのときとはまったく違う。体は火照り、甘く焦れているようだった。

「ラティーシャ」

 それが、最終確認だった。
 唇が重なる瞬間は時の早さが半分になってしまったのではないかと思うほどだった。
 ゆっくりと押し重ねられた唇は熱く、口と口を合わせているのだと実感させられる。しかしそれが不快だとは感じなかった。
 唇が、またゆっくりと離れる。マティアスはラティーシャの反応を見ているのか、彼女をじいっと観察する。

「嫌じゃ、ない……か?」

 ラティーシャは素直にこくっと小さくうなずいた。
 マティアスは安心したように息をつき、あらためてラティーシャの頬から首のあたりまでを手のひらで覆う。

前 へ l 目 次 l 次 へ


2017年05月07日

秘されし、その甘やかな救済 第二章08



「ラティーシャ、こっちの果実酒はどうだ? 甘くて飲みやすいぞ」
「いいえ、私は本当にけっこうですから」
「なんだ、そんなに酒グセが悪いのか?」
「……わかりません。お酒を飲んだことがないので」
「では試してみよう。きみは酒グセがよいのか悪いのか、俺はとても興味がある」

 ――もし酒グセが悪かったら、彼は求婚を取り下げるだろうか。

(いやだ、私……なにを考えているんだろう)

 結婚したくないのなら酒グセが悪いふりをすればいい。しかしラティーシャはそうは考えなかった。飲まされても平静でいなければ、と思ってしまった。
 そうしてラティーシャが秘かに悩んでいるあいだにマティアスは小さな円筒形のグラスに果実酒を注いだ。

「どうぞ」
「あ……ありがとうございます」

 ここで酒を断るのはかえって失礼だ。
 ラティーシャはグラスを両手で持ち、クイッと傾けて果実酒を口にする。

「どうだ?」
「甘くて……美味しいです。ベリーの香りがします」
「ではどんどん飲んでくれ」

 マティアスはラティーシャが持つグラスに酒を注ぎ足す。

「いいえ、一杯だけでじゅうぶんです」
「遠慮するな。……そうだな、きみが巫女になる前祝いだと思って」
「巫女に……なれるでしょうか。私――」

 淫行と飲酒だ。いまさらそれを自覚した。ラティーシャの表情が曇る。

「なれるさ、きっと。きみは神を信じているんだろう?」

 ラティーシャは言葉なくうなずく。

「神は思いのほか寛容だ。酒を飲んだくらいで咎めはしない。むしろ彼も――」
「彼……とは?」

 ラティーシャは首を傾げる。

「いや、忘れてくれ。とにかく、祝い酒なんだから浴びるように飲んでいいんだ」

 何だか無茶苦茶な理屈だが、果実酒が美味しいせいでうながされるまま飲み干してしまう。
 グラスは小さい。ゆえに、どれだけ飲んだのかさっぱりわからない。

「……もう、おなかいっぱいです」

 ひっく、としゃっくりしながらラティーシャが言った。すっかり酔っ払ってしまったラティーシャをマティアスはたまらないといったようすでうっとりと見つめる。マティアスのほうはラティーシャに酔っている。

「髪の毛に触れてもいいか?」
「んん……」

 マティアスが銀の髪の毛を指で掬う。

「……きみは本当は人恋しいんじゃないか」

 マティアスは真剣な声音で話し続ける。

「きっと、寂しいんだ。だから自分の殻に閉じこもる。……俺は、そうだった」

 掬い上げた銀の髪束にマティアスが口付けを落とす。

「俺はきみを傷つけない。絶対に裏切らない。生涯、きみだけを愛する」
「……!」


前 へ l 目 次 l 次 へ


2017年05月06日

秘されし、その甘やかな救済 第二章07



「え、っ……!?」

 ラティーシャはわけがわからない。
 マティアスの肉茎から噴き出した白濁液がラティーシャの胸を――透けた乳頭を濡らした。
 いまだに手の中にある雄の象徴はわずかにしぼんだものの、つかんだままでいたせいかまたふくらみ始める。

「……ありがとう、ラティーシャ。もう、じゅうぶんだ」

 マティアスは口もとを隠して頬を赤らめている。

(ええと……終わり、でいいのよね?)

 彼の一物を手放す。
 マティアスが恥ずかしそうに頭を抱えている理由がわからずラティーシャは首を傾げた。

「……俺はもう出て行くから、きみはバスタブに入るといい。ゆっくりしていてくれ。くれぐれも、ゆっくりだ」

 そう言うなりマティアスは湯桶を手に取りバシャッと頭から勢いよく自身に湯をかけ、しとどに濡れたまま浴室を出て行ってしまった。
 湯浴みを終えて寝室へ戻ると、マティアスはソファに腰掛けて晩酌を始めていた。

「付き合ってくれるか? ラティーシャ」
「はい」
「ではここに座ってくれ」

 純白のネグリジェを着たラティーシャがマティアスのとなりに腰を下ろす。彼のほうは濃いグレーのナイトガウンを着ていた。襟にはシュバルツ公爵家の紋がいくつも連なって細かく刺繍してある。
 ラティーシャはワインボトルを手に取ってマティアスが持つグラスに赤いワインを注いだ。酌は兄や姉たちによくさせられていたので勝手はわかる。
 マティアスはラティーシャが注いだワインをグイッといっきに仰いだ。よすぎるくらいの豪快な飲みっぷりだ。

「ああ……今宵の酒は格別に美味い。きみが酌をしてくれるだけで、この酒は極上品に早変わりする」

 もとからよい酒なのだから美味しいのだと思うが。
 しかしそれは口には出さず――よけいな茶々は入れずラティーシャはまた空のグラスにワインを注いで満たす。

「きみもどうだ?」
「いいえ、私はけっこうです」
「巫女見習いは飲酒してはいけない、という規則はないぞ?」

 マティアスはいつかのように得意げだ。

「公爵さまは神殿の内情にお詳しいようで」
「きみの兄さんからいろいろと聞いている。……なあ、その『公爵さま』というのはそろそろやめにしないか?」
「ですが……」
「マティアス、と呼んでもらいたい。頼む、ラティーシャ」

 ごく真面目な顔つきで懇願されては、そうせざるを得ない。

「……マティアスさま」

 すると彼は満面の笑みになった。上機嫌でグラスの酒を飲み干す。

前 へ l 目 次 l 次 へ


2017年05月05日

秘されし、その甘やかな救済 第二章06


 しかしそうしていつまでも無遠慮に見つめているだけでは埒があかない。

「ど……、どうすればよろしいのですか?」
「――え」

 ラティーシャがなにかしなければ、彼の昂りはおさまらないのだろう。ラティーシャは義務感を覚えてマティアスに迫る。

「その……どうすれば公爵さまのそれは落ち着かれるのですか?」
「いや……無理はしなくていい」
「いいえ、私にできることなら、いたします。公爵さまには恩がありますから」

 マティアスは口もとに指を当ててふいっとラティーシャから視線を逸らす。

「ラティーシャは忠義だな……。そんなきみに仕えてもらえる神がうらやましいよ」

 彼の碧い瞳がゆっくりとラティーシャのそれをとらえる。立ち込める湯気のせいか、マティアスの瞳が濡れているように見えた。澄んだ水底を思わせる美しい碧だ。

「――だが、この邸にいるあいだはきみの主人は俺……ということで、いいね?」
「は、はい」

 気圧されてうなずく。別段、高圧的な物言いをされたわけではないのに、従わされてしまう。もとよりそのつもりなので反発する必要もない。彼にはすすんで奉仕したくなるのは、なぜだろう――。

「ここの……根もとを握り込むんだ」

 ラティーシャは言われるまま肉竿の根をつかむ。

(……硬い)

 手のひらに触れている男根の表皮は柔らかいが、その奥――芯の部分はとんでもなく硬い。握り込んでみて初めてそれがわかった。

「前後に動かしてくれ。……そう、上手だ」

 マティアスが「はぁ」と小さく吐息まじりに声を漏らす。

(私……)

 不埒な行いをしている。
 ――これは神の御心に反する行為ではないの?
 頭の中でもうひとりの自分がそう警告してくる。
 しかしラティーシャの手は止まらない。
気持ちよさそうに眉根を寄せるマティアスの顔をもっと見ていたいと思った。
 彼を、もっと悦ばせたい――。
 気がはやったせいか、ラティーシャの手の動きも速くなった。
 肉棒の先端から透明の液体がにじみ出てきた。それは快感ゆえの先走りなのだが、ラティーシャにそういう知識はない。

(公爵さまは悦んでいる?)

 手でこすっているだけなのに気持ちがいいのだろうか。彼の表情でそれを確認するべく上を向く。
 マティアスとラティーシャの目が合う。

「――っ!!」

 ドクッ、ドクッと手の中にあるそれが激しく打ち震える。

前 へ l 目 次 l 次 へ




ページトップへ